介護の制度 / 2026年8月29日

福祉用具レンタルと購入|2024年からの選択制

福祉用具の選択制を表したAI生成イラスト。玄関先で高齢の方が杖の使い心地を確かめ、家族がそばで支えている場面
記事の内容をもとに作成したAI生成イラストです。実在する人物・施設ではありません。

「親に杖を用意したいのですが、借りるのと買うの、どちらが得ですか」

2024年4月から、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4品目は、レンタルと購入を選べるようになりました。分かれ目は使う期間です。厚生労働省の集計では、この4品目の平均利用月数は11.0か月から14.6か月でした。それより長く使いそうなら購入、短ければレンタルが目安になります。

2024年4月から選択制になった福祉用具4品目と、レンタルと購入の違いを並べた図 令和6年4月1日から貸与と販売の選択制の対象になった福祉用具は4品目。固定用スロープの平均利用月数は13.2か月、歩行器(歩行車を除く)は11.0か月、単点杖(松葉づえを除く)は14.6か月、多点杖は14.3か月(厚生労働省 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A Vol.1 問101、介護保険総合データベースによる)。レンタルを選んだ場合、自己負担は費用額の1割から3割で毎月かかり、事業所には点検・消毒・修理を行う義務があり、提供開始から6か月以内に少なくとも1回のモニタリングが義務づけられている。購入を選んだ場合、費用はいったん全額を支払って後から9割から7割が戻る償還払いが原則で、同一年度の支給限度基準額は10万円、使用状況の確認や修理は事業所の努力義務にとどまる。 選択制の対象は4品目(令和6年4月1日から)と、借りる・買うの違い 平均利用月数は厚生労働省Q&A Vol.1 問101(介護保険総合データベース)による 選択制の対象品目 平均利用月数 固定用スロープ(取り付けに工事を伴わないもの) 13.2か月 歩行器(歩行車を除く) 11.0か月 単点杖(松葉づえを除く) 14.6か月 多点杖 14.3か月 借りる(福祉用具貸与) ・毎月、費用額の1割〜3割を負担 ・点検、消毒、修理は事業所の義務 ・開始から6か月以内に1回以上 モニタリング(義務) ・区分支給限度基準額の枠を使う 短く使うなら有利になりやすい 買う(特定福祉用具販売) ・いったん全額払い、9〜7割が戻る ・同一年度の限度は10万円 ・使用状況の確認と修理は 事業所の努力義務にとどまる ・原則として同一種目の再購入は不可 長く使うなら有利になりやすい
厚生労働省の「福祉用具貸与と特定福祉用具販売の選択制について」および指定居宅サービス等基準の記載内容をもとに作成した図です(2026年8月29日確認)。

選べるようになったのは、4品目だけ

令和6年(2024年)4月1日から、福祉用具のうち4品目について、レンタル(福祉用具貸与)と購入(特定福祉用具販売)のどちらかを利用者が選べるようになりました。対象は固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖です。根拠は令和6年3月15日厚生労働省告示第86号による告示の改正と、令和6年厚生労働省令第16号による指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)の改正です。

厚生労働省は「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」で、この改正の理由をこう書いています。「利用者の過度な負担を軽減しつつ、制度の持続可能性の確保を図るとともに、福祉用具の適時・適切な利用、利用者の安全を確保する観点から、一部の福祉用具について貸与と販売の選択制を導入する。」対象を4品目に絞った理由としては、要介護度に関係なく給付でき、比較的廉価で、購入したほうが負担が抑えられる方の割合が相対的に高い品目だから、と説明されています。

先に自分の立場を書いておきます。私は磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営しています。福祉用具の貸与も販売もしていません。つまりこの記事の中身で、私に売上は立ちません。その分、遠慮なく書きます。

4品目以外は、種目ごとに借りるか買うかが最初から決まっている

福祉用具の給付は、レンタルの対象と購入の対象が種目ごとに分かれています。レンタル(福祉用具貸与)の対象は13種目で、車いす、車いす付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置です。購入(特定福祉用具販売)の対象は、選択制の導入前は腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、排泄予測支援機器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分の6項目でした。ここに選択制の3項目が加わり、現在は9項目です。

言い換えると、車いすや特殊寝台は買えませんし、腰掛便座や入浴補助用具は借りられません。「借りるか買うか」で迷えるのは、冒頭の4品目だけです。ここを取り違えたまま福祉用具の店に行くと、話がかみ合いません。

もうひとつ、線が引かれているところがあります。スロープは、取り付けに工事を伴う場合は住宅改修の扱いになり、工事を伴わない場合が福祉用具の貸与または販売です(厚生労働省の令和6年度介護報酬改定に関するQ&A Vol.1 問105)。住宅改修は上限20万円の別枠なので、財布が違います(介護保険の住宅改修20万円、磐田市の申請は工事の前)。

分かれ目は「何か月使うか」。損得は月数で割り戻す

選択制の4品目でレンタルと購入のどちらが安く済むかは、使う期間で決まります。レンタルの自己負担は費用額の1割から3割が毎月かかり、購入は最初に一度だけ、購入額の1割から3割が自己負担になります。だから計算は単純で、購入したときの自己負担額を、レンタルの月々の自己負担額で割れば、何か月目で並ぶかが出ます。

この割り算に入れる金額は、商品ごと、事業所ごとに違います。私が勝手な数字を置くわけにはいかないので、月数のほうの目安だけ書きます。厚生労働省が介護保険総合データベースから示した平均利用月数は、固定用スロープ13.2か月、歩行器11.0か月、単点杖14.6か月、多点杖14.3か月です(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A Vol.1 問101)。1年を超えて使う方が多い、ということです。

ただし、平均を自分の親に当てはめるのは危ないと私は考えています。平均が14.6か月というのは、3か月でやめた方と3年使い続けた方が混ざった結果です。退院直後で回復が見込める方と、進行性の状態で先に車いすが必要になりそうな方では、同じ杖でも答えが逆になります。

レンタルが向きやすい退院直後で体の状態が変わりそう/季節や生活の変化で要るか分からない/もっと大きな用具に移りそう
購入が向きやすい状態が落ち着いていて長く使いそう/本人の体格や好みに合う特定の1本がある/区分支給限度基準額の枠を他のサービスで使い切っている

最後の行が見落とされがちです。レンタルは区分支給限度基準額の枠の中に入りますが、購入は別枠の10万円(居宅介護福祉用具購入費支給限度基準額、平成12年厚生省告示第34号)です。デイサービスや訪問介護で枠が埋まっている方にとっては、購入のほうが枠を空けられます。

買うと、点検と修理が義務ではなくなる

ここが今回いちばん意外なところだと私は思っています。同じ杖でも、借りるか買うかで、事業所が負う責任の重さが変わります。

指定居宅サービス等基準第199条は、貸与の事業者について「貸与する福祉用具の機能、安全性、衛生状態等に関し、点検を行う」「利用者等からの要請等に応じて、貸与した福祉用具の使用状況を確認し、必要な場合は、使用方法の指導、修理等を行う」と定めています。語尾は「行う」で、義務です。回収した用具の消毒も義務です(第203条)。さらに選択制の対象品目については、提供開始から6か月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、継続の必要性を検討することが義務づけられています(第199条の2第5項ただし書)。

一方、販売の事業者については、第214条第5号が「販売した福祉用具の使用状況を確認するよう努めるとともに、必要な場合は、使用方法の指導、修理等を行うよう努める」と定めています。語尾は「努める」で、努力義務です。費用についても、厚生労働省のQ&A(Vol.1 問104)は「販売後のメンテナンス等にかかる費用の取扱いについては、利用者と事業所の個別契約に基づき、決定されるものと考えている」と回答しています。

買えば自分の物になる、というのは当たり前の話ですが、介護の用具では「自分の物になる」=「壊れたときに誰も見に来る義務がない」でもあります。杖のゴム先が減っていることに家族が気づけるかどうか。私が購入をすすめる前に一度立ち止まるのは、この一点です。

良い点は2つ、注文したい点も2つ

良い点から数えます。1つ目は、長く使う方の負担が下がることです。杖1本を14か月借り続けるより買ったほうが安く済む家庭は確実にあります。制度がそれを選べるようにしたのは筋が通っています。2つ目は、選ぶ前の説明が事業者の義務になったことです。指定居宅サービス等基準第199条第2号は、貸与・販売のいずれかを選択できることを十分に説明し、必要な情報を提供したうえで、医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・担当者らの意見と利用者の身体の状況を踏まえて提案を行うものとする、と定めています。黙って売ることはできません。

その上で、注文したい点が2つあります。1つ目は、購入後の点検が努力義務のままであることです。安全に関わる用具なのに、借りれば義務、買えば努力義務という差は、利用者側からは見えません。2つ目は、判断の材料が家族に届きにくいことです。平均利用月数のような数字は国のQ&Aの中にあり、ふつうのご家族は目にしません。一事業者としては、こういう数字こそ市町村の案内や事業所の説明資料に載ってほしいと思っています。

運営する側から言うと、迷っているなら先に借りる

ここからは私の意見です。手元の記録に当てはまる現場の一場面がないので、体験談ではなく考えとして書きます。

迷っているなら、まず借りるほうを私はすすめます。理由は損得ではなく、体の状態が変わるからです。杖から歩行器へ、歩行器から車いすへという移り方は珍しくありません。買ってしまうと、合わなくなった用具が玄関に置きっぱなしになります。実家の片付けの相談を受けていると、使われないまま置かれた介護用品は本当によく出てきます。

逆に、3か月使ってみて本人の手になじんでいるなら、そこで購入に切り替えればいい。厚生労働省のQ&A(Vol.5 問5)でも、販売後に身体状況の変化等で同じ種目の別の用具を貸与することは可能とされています。順番を「借りる→買う」にしておけば、判断の材料が増えてから決められます。逆はやりにくい。

なお、購入費の支払い方について、私が確認できなかったことを書いておきます。自治体によっては受領委任払い(最初に自己負担分だけ払う方法)を用意しているようですが、これを国の制度として定めた告示や通知を、私は見つけられませんでした。自治体ごとの取扱いだと思われますが、断定はできません。磐田市がどうかは、市の窓口かケアマネジャーにご確認ください。

杖の貸与・購入を選ぶ前には、単点杖と多点杖の違いと、本人に合う種類の確認を先に整理できます。

今日できる確認は3つ

今日、買うか借りるかを決める必要はありません。次の3つを確かめておくと、次に福祉用具の担当者と話すときに判断が早くなります。

1. その品目が選択制の対象か固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4品目以外は選べない
2. どれくらいの期間使いそうか主治医やリハビリの担当者に、体の状態が今後どう変わりそうかを聞く。選択制では医師やリハビリ職の意見を踏まえた提案が事業者に求められている
3. 区分支給限度基準額の残りデイサービスや訪問介護で枠が埋まっているかを、担当のケアマネジャーに確認する(ケアマネジャーの変更方法と選び方|磐田市の届出書)

ついでに、市の別枠の助成も見ておくと無駄がありません。磐田市には介護保険とは別に11の在宅福祉の事業があります(磐田市の高齢者等在宅福祉サービス、使える11事業)。なお、福祉用具の購入費は高額介護サービス費の対象外です(高額介護サービス費とは|上限額と2026年8月改定)。

介護ベッドを使っている家庭は、購入・貸与の別とあわせて介護ベッドの隙間対策|磐田の親と確認する順番も確認してください。

借りた後に使いにくさや使わない様子が出た場合は、福祉用具のモニタリング|磐田の家族の準備で相談前の準備を整理しています。

移乗の用具を検討している場合は、移動用リフト本体とつり具の違い|磐田で確認で本体側の貸与とつり具部分の販売を分けて確認できます。

スロープを検討する場合は、固定用スロープと携帯用の違いで、小さい段差に使う用具と設置工事の区分を購入前に確認してください。

よくあるご質問

レンタルと購入を選べるのは、どの福祉用具ですか。

2024年4月1日から選択制の対象になったのは4品目です。固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖。車いすや特殊寝台はレンタルのみ、腰掛便座や入浴補助用具は購入のみで、選べません。厚生労働省の資料では、比較的廉価で購入したほうが負担が抑えられる方の割合が高い品目を対象にしたと説明されています。

購入したあとに体の状態が変わったら、レンタルに切り替えられますか。

できます。厚生労働省の令和6年度介護報酬改定に関するQ&Aでは、購入後に身体状況の変化等で同じ種目の別の福祉用具を貸与することは可能とされています。修理できない故障で新たに必要になった場合も、購入だけでなく貸与を選べます。ただし判断はケアプランの見直しを伴うので、担当のケアマネジャーに先に相談してください。

中古の福祉用具を購入することはできますか。

厚生労働省のQ&A(Vol.5)は、選択制で新たに販売対象になった品目についても原則として新品の販売を想定していると回答しています。理由として、販売には定期的なメンテナンスの義務付けがないことを挙げています。中古品を検討する場合は、点検や修理を誰がどこまで行うのかを、購入前に事業所へ確認してください。

著者・大石浩之(富士ヶ丘サービス代表取締役・宅地建物取引士)の顔写真

この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール

参考にした公式情報

制度・自己負担・利用条件は個別の状況と時期で変わります。ここに書いたのは一般的な整理です。福祉用具の価格や月々のレンタル料は商品と事業所によって違い、購入費の支払い方の取扱いも市町村で異なります。ご本人の状況にあてはまるかどうかは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市の窓口でご確認ください。

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