「実家に手すりを付けたいのですが、介護保険からいくら出ますか」
上限は一人あたり20万円です。ただし金額より先に、順番を確かめてください。磐田市は、改修する前に市へ書類を出して承認を受けていることを支給の条件にしています。先に工事を済ませてしまうと、対象になる工事でも支給されません。
20万円より先に確かめるのは、申請の順番
介護保険の住宅改修費は、工事を始める前に市へ申請して承認を受けることが支給の条件になっています。磐田市は「住宅改修費」のページで、支給の対象者の条件として「改修する前に市(高齢者支援課)に書類(事前申請)を提出し、承認を受けていること」を挙げています(2026年6月25日更新/2026年8月28日確認)。
厚生労働省の通知「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(老企第42号)も、被保険者が住宅改修を行おうとする前に申請書または書類の一部を市町村に提出し、市町村が保険給付として適当かどうかを確認して結果を事前に教示する、という順番を示しています。工事が先、申請が後、では成り立たない仕組みです。
支給限度基準額は、要介護状態区分にかかわらず一人あたり20万円。このうち保険から出るのは9割・8割・7割で、残りの1割・2割・3割が自己負担です。20万円を超えた分は、超えた全額が自己負担になります。
対象は6種類だけ。傷んだから直す工事は入らない
介護保険の住宅改修で対象になる工事は、厚生労働大臣が定めた6種類に限られています。磐田市のページに載っている区分は次のとおりです。
- 手すりの取付け(廊下・便所・浴室・玄関など)
- 段差の解消(床段差、通路の段差)
- 滑りの防止および移動の円滑化などのための、床または通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え(開き戸から引き戸・折り戸へ)
- 洋式便器等への便器の取替え
- 前の各号の住宅改修に付帯して必要となる工事(壁の下地補強、給排水設備の工事など)
2番の段差の解消でよく出てくるスロープは、取り付けに工事を伴う場合が住宅改修、工事を伴わない場合は福祉用具の貸与または販売です。2024年4月からは固定用スロープが貸与と販売の選択制の対象にもなりました(福祉用具レンタルと購入|2024年からの選択制)。
ここで落ちやすいのが理由の書き方です。磐田市は、本人の身体的な状況にもとづく改修の理由が必要であり、老朽化などを理由とする工事は対象にならないと明記しています。同じ「浴室の床を張り替える」工事でも、滑って転びそうだから張り替えるのか、古くなったから張り替えるのかで扱いが分かれます。
20万円は一生に一度ではない。もう一度使える場合が2つある
住宅改修費の20万円は、一度使ったら終わりの枠ではありません。老企第42号は、最初に支給を受けた住宅改修の着工時点と比べて「介護の必要の程度」の段階が3段階以上上がった状態で行った改修について、それ以前に支給された額にかかわらず改めて20万円までの支給を受けられるとしています。転居した場合も、改めて限度基準額までの支給を受けられます。
20万円に満たない額で終わったときは、残りの額を後日の改修に回せます。最初に玄関の手すりだけを付け、体の状態が変わってから浴室に手を入れる、という分け方ができるということです。私はこの順番のほうが合う家が多いと考えています。まだ歩けるうちに家中を作り替えると、手すりの高さが半年後の体に合わなくなります。
金額の感覚も置き換えておきます。20万円の工事を1割負担で行った場合、保険から出るのは18万円、自己負担は2万円です。介護の費用は毎月出ていくものがほとんどですが、住宅改修は一度きりの支出で、しかも枠が20万円と決まっています。要介護認定の区分ごとに変わる区分支給限度基準額とは別枠なので、月々のサービス量を削って手すりを付ける、という計算にはなりません。
磐田市の良い点が2つ、注文したい点が2つ
磐田市の住宅改修の運用には、家族の負担を軽くする仕組みが2つあります。良い点から数えます。
1つは受領委任払です。磐田市と契約した事業者に工事を頼んだ場合、利用者が事業者へ支払うのは1割・2割・3割の自己負担分だけで、残りは市から事業者へ直接支払われます。もう一方の償還払だと、いったん全額を事業者に払い、後から保険給付分が本人の口座に振り込まれます。20万円の工事を1割負担で行うなら、最初に用意する現金は2万円か20万円か。差は18万円です。退院の直後にこの18万円をひと月立て替えられるかどうかは、家計にとって小さな違いではありません。
もう1つは、住宅改修の必要理由書を書いた専門職への手数料を市が支給する仕組みです。磐田市は1件につき2,200円(消費税を含む)を、理由書を作成した介護支援専門員や作業療法士などへ支払うとしています(指定居宅介護支援事業所に属する介護支援専門員は対象外)。これは家族が払う費用ではありません。理由書を書いてもらうこと自体をためらう必要はない、という設計です。
その上で、一事業者として注文したい点も2つあります。1つは、受領委任払を使える事業者が「市と契約した事業者」に限られること自体は分かるものの、どの事業者が契約しているのかを家族が家で調べる手段が見つけにくいことです。私が探した範囲では一覧にたどり着けませんでした。窓口に電話をすれば分かる話ですが、18万円の立て替えを避けられるかどうかが、窓口に電話をした人だけの情報になっています。
もう1つは、在宅であることが条件になっている点です。磐田市は支給の対象者として、在宅であること(入院・入所していないこと)を挙げています。制度としては筋が通っています。ただ、実際に手すりが要るのは、退院して家に帰る日からです。入院中に段取りを終わらせておきたいご家族の希望と、条件の書き方が噛み合いにくい。ここは市の担当課だけで決められる話ではないので、注文というより、現場からの報告として書いておきます。
運営する側から言うと、見積もりより先に見るのは家の名義
磐田市が挙げる支給の条件には、住宅の所有者の承認を得ていることも含まれます。工事前の提出書類にも「住宅所有者の承諾書(本人と異なる場合)」が並んでいます。私は磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターの3つを運営していて、同時に不動産業で家の名義を毎日見ている側でもあります。だから、この一行でつまずく家が想像できます。
以下は特定のご家族の事例ではなく、私の考えです。実家が親の名義のままなら話は早い。ところが、先に亡くなった親から相続した家が兄弟の共有名義になっていて、登記を動かしていない家があります。その場合、承諾書に名前を書くのは誰なのか。借家であれば、大家さんの承諾が要ります。手すり1本の話が、名義の話に化けます。
迷っていることも書いておきます。20万円で足りるかどうかは、私にはその家を見るまで言えません。工事の相場をここに書けば読者の役には立つのでしょうが、家ごとに下地の状態が違い、無責任な数字になります。見積もりは2社に取ってください、としか私には言えない。ここは正直に、分からないと書きます。
今日できる確認は3つ
工事を決める必要はありません。今日のうちに、手元と電話で終わることが3つあります。
- 実家の登記名義が誰になっているかを確かめる。借家なら大家さんの連絡先を確認します。承諾書が要ると分かってから探すと、そこで1週間止まります。
- 担当のケアマネジャーに、必要理由書を書けるかを聞く。まだ要介護認定を受けていない場合は、そちらが先です。申請から結果までの日数は要介護認定は何日で出る?磐田市は平均30.1日に書きました。担当のケアマネジャーがいない段階なら、地区の地域包括支援センターが入口です(磐田市の介護相談窓口)。
- 磐田市 高齢者支援課 給付グループに、受領委任払を使える事業者を聞く。電話は0538-37-4869、受付は午前8時30分から午後5時15分まで。ここで聞けるかどうかで、最初に用意する現金が変わります。
家に手を入れるか、住み替えるかは、まだ決めなくてかまいません。在宅で続ける前提の組み立ては訪問介護のページに、住み替えを含めて考える場合の材料は住まいのページに置いています。介護の順番そのものを整理したい方は介護を知るから読んでください。うちに相談していただく必要はありません。今日、決めるための材料が1つ増えれば十分です。
工事を考える前に、段差以外の身体や薬の要因も確認対象にします。高齢者の転倒原因と、磐田の親と確かめる生活環境も確認してください。
手すりを検討する場合は、手すりレンタルと住宅改修の区分で、ネジ止めを含む工事の有無を取り付け前に確認してください。
よくあるご質問
介護保険の住宅改修費は、工事のあとでも申請できますか。
磐田市は、改修する前に市へ書類を提出して承認を受けていることを支給の条件として挙げています。工事を先に済ませてしまうと、厚生労働大臣が定めた6種類にあたる工事でも支給を受けられません。手すりを付けたい場所が決まった時点で、担当のケアマネジャーと市の高齢者支援課 給付グループへ相談してください。
20万円は一度使うと、もう使えませんか。
使い切りではありません。厚生労働省の通知(老企第42号)は、最初に支給を受けた住宅改修の着工時点と比べて「介護の必要の程度」の段階が3段階以上上がった場合、および転居した場合には、改めて20万円までの支給を受けられるとしています。20万円に満たない額で終わった場合、残りの額は後日の改修に使えます。
入院中の親のために、退院前に手すりを付けられますか。
磐田市は支給の対象者の条件として、在宅であること(入院・入所していないこと)を挙げています。入院中に工事を進める場合の扱いは個別の判断になるため、私は退院日が決まった時点で、担当のケアマネジャーと市の高齢者支援課 給付グループの両方へ同時に相談することをおすすめしています。
この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール
参考にした公式情報
- 磐田市「住宅改修費」(2026年6月25日更新/2026年8月28日確認)
- 磐田市「住宅改修理由書作成手数料の支給」(2026年8月28日確認)
- 厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」(平成12年3月8日 老企第42号/2026年8月28日確認)
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」(2026年8月28日確認)
制度・自己負担・利用条件は個別の状況と時期で変わります。ここに書いたのは2026年8月28日時点の一般的な整理です。自己負担の割合は負担割合証に記載された区分によって1割・2割・3割のいずれかになります。受領委任払を使えるのは磐田市と契約した事業者に依頼した場合に限られ、契約している事業者の範囲は市へお問い合わせください。20万円の工事で立て替えが18万円変わるという計算は、対象費用が20万円ちょうどで自己負担1割の場合を私が単純に置いたもので、公表された事例ではありません。ご本人の状況にあてはまるかどうかは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市の窓口でご確認ください。