
Q. 親の杖は、先が一本の物より多点杖の方が安心?
A. 単点杖と多点杖は地面に接する先端の構造が異なりますが、支点の数だけで本人に合う杖は決まりません。身体の状態と使う場所を福祉用具専門相談員へ伝え、適合を確認します。介護保険では対象となる単点杖(松葉づえを除く)と多点杖に貸与・販売の選択制があります。市販の一本杖すべてが給付対象ではありません。
制度・利用可否・自己負担は個別条件で変わります。2026年10月8日に確認した一般的な情報と、運営者としての意見を分けて記載しています。
単点杖と多点杖は、地面に接する形が違う
単点杖は先端の一つの点で接地する構造、多点杖は先端が枝分かれして複数の点で接地する構造です。ただし、形を見分けることと、本人に合う用具を選ぶことは別です。支点が増えれば、どんな場所でも安全になるという意味ではありません。
厚生労働省「福祉用具・住宅改修」は、福祉用具専門相談員が本人の希望、心身の状況、環境を踏まえ、選定や使用方法を助言する役割を説明しています。この記事は2026年10月8日に公式情報を確認し、親の杖を選ぶ前の相談事項を整理したものです。
| 比べる点 | 単点杖 | 多点杖 |
|---|---|---|
| 先端の形 | 一つの接地点 | 複数の接地点 |
| 相談で確かめること | 本人の持ち方や歩き方に合うか | 脚部を置く場所と歩く動作が合うか |
| 共通の確認 | 身体の状態、使用場所、製品の適合、給付対象 | |
私は、売り場の見た目だけで「こちらが安心」と決めない方がよいと考えます。廊下、出入口、屋外の道など、使いたい場所を先に挙げます。脚が置ける広さや床の状態も含め、専門職へ実際の環境を伝えてください。
選択制は2024年4月から、すべての一本杖が対象ではない
厚生労働省は、2024年4月1日から単点杖(松葉づえを除く)と多点杖などを、福祉用具貸与と特定福祉用具販売の選択制の対象にしています。借りるか買うかを選べる仕組みですが、一般の売り場にある一本杖すべてを介護保険で買えるという案内ではありません。
対象になる製品の区分と、本人が給付を受けられる条件は、購入前に確認してください。商品名に「介護」「歩行補助」と書かれていることだけでは決まりません。価格が手頃だから先に買い、あとで給付を受けようとすると、対象や手続きが合わない可能性があります。
私は、本人の状況を踏まえて貸与と販売を検討できる点を評価します。杖の種類を決めたあとにも、利用方法を選ぶ余地があるからです。厚生労働省は、ケアマネジャーと福祉用具専門相談員が情報を集め、選択制の提案を行うと説明しています。
そのうえで私は、選択肢を示すだけでなく、本人が困ったときに誰へ相談するかまで伝えてほしいと考えます。借りるか買うかの比較は、福祉用具の貸与と購入を整理した記事へ分けました。本記事では、まず杖の種類と本人との適合を扱います。
要支援・要介護1でも、杖の貸与を一律に諦めない
厚生労働省の給付対象種目の説明では、歩行補助つえは福祉用具貸与の対象に含まれます。要支援・要介護1の方を原則対象外とする扱いから、歩行補助つえは除かれています。軽い認定だから杖は借りられない、と一律に判断することはできません。
この点は、介護用の用具には重い認定が必要だと思っていた方には意外かもしれません。ただし、認定区分の扱いだけで個別製品の給付が確定するわけではありません。製品の区分、利用条件、自己負担は専門相談員や担当のケアマネジャーに確認します。
本記事では製品価格や自己負担額を掲載しません。見積りを頼む場合は、製品名と利用方法が分かる形で説明を受けてください。単点杖と多点杖を価格だけで入れ替えるのではなく、どちらが本人の動作に合うかの確認が先です。
店へ行く前に、使う場所と動作を伝える
福祉用具専門相談員に杖の選定を相談するときは、本人が歩きたい場所と、困っている動作を具体的に伝えます。私は家族の準備を「症状を診断すること」ではなく、「見えている事実をそろえること」と考えています。
家の中なら、椅子から立ったあとにどこへ行くか、廊下で向きを変えるか、敷居をまたぐかを確認します。屋外なら、玄関から道へ出る経路や、立ち寄りたい場所を伝えます。家族だけで危ない動作を再現させず、分からない動作は専門職の確認に残してください。
相談メモは「本人の希望」「困っている場面」「使う場所」「今使っている用具」の順で書くと整理できます。高さや使う手をインターネットだけで決めず、握りやすさや歩き方も本人と一緒に確かめてもらいます。痛みや体調の不安は医療職への相談事項です。
杖以外の用具を勧められた場合も、見た目が似ているという理由で選ばないでください。シルバーカーと歩行車の違いのように、別の種類には別の確認が要ります。家族が先に候補を絞り過ぎず、専門職の説明を聞く余地を残します。
使い始めたあとの違和感も、選定の相談先へ戻して構いません。持ちにくい、置き場所に困るなど、使う場面が変わったことを伝えます。福祉用具のモニタリングで家族が伝える内容も、その記録に役立ちます。
運営する側から、買って渡す前の確認を残す
大石浩之(磐田市/不動産業)として、私は富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役を務めています。介護関連サービスを運営し、契約をいただくことに利害がある立場です。ただ、当社への入居や通所の相談と、杖の製品選定は同じ判断ではありません。
私はこう考えます。親へ杖を渡すなら、品物より先に「どこで使いたいか」を聞く時間を渡したいです。早く役に立つ物を用意したい気持ちと、本人が使わない物を増やしたくない気持ちの間で、私も迷います。それでも、見た目だけで選んで家へ届ける順番にはしません。使う場所を書き、相談先を決め、本人が納得するまで購入を保留する。この順番を私は選びます。実際の購入事例ではなく、運営者としての意見です。
当社のサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」は住まいです。ふじがおか見付デイサービスは通所介護、ふじがおか訪問介護センターは訪問介護です。住まいと介護サービスの契約は別です。利用する場所が増える場合も、杖をどこで使う予定かをそれぞれの担当者へ伝えます。
今日できる確認は、親が杖を使いたい場所を一つ聞くことです。候補の商品を買う前に、その場所と困る動作を専門相談員へ伝えてください。選べない日は購入日を決めず、適合の確認日だけを相談しても構いません。
よくあるご質問
個別の条件は、関係する窓口や専門職に確認してください。
多点杖なら転倒を防げますか。
多点杖という種類だけで、個人の転倒を防げるとは保証できません。地面に接する部分の形が違っても、本人の身体の状態、使い方、使用場所との適合を確かめる必要があります。家族が脚の数だけで選ばず、福祉用具専門相談員へ使いたい場所と困る動作を伝えてください。痛みや体調など医療上の不安は、医療職にも相談します。
店で買った一本杖も介護保険の対象ですか。
一般に販売されている一本杖すべてが、介護保険の給付対象になるわけではありません。選択制の対象となる単点杖には松葉づえを除く条件があり、具体的な製品区分や購入先、手続きの確認も必要です。購入後に給付されると決めず、買う前に福祉用具専門相談員や担当のケアマネジャーへ製品名を伝え、利用条件を確認してください。
要支援なら杖を借りられませんか。
歩行補助つえは、要支援・要介護1の方を原則給付対象外とする扱いから除かれています。認定が軽いという理由だけで、杖の貸与を諦める必要はありません。ただし、対象製品や本人の利用条件、自己負担は個別に確認します。担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員へ、必要な支援と使う場所を伝え、適合と給付を分けて相談してください。

この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。住まい・通所・訪問の介護関連サービスを運営する、利害のある立場から書いています。実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール
参考にした公式情報
次の一次情報を2026年10月8日に確認しました。資料の公表日や更新日と、本記事の確認日を分けています。
当社への相談を希望する場合は、電話または相談フォームを選べます。入居や契約を決める前の相談でも構いません。
相談フォームへ 電話で相談:0538-33-7070(9:00~17:30)
制度・数値・案内は今後変わる場合があります。個別の機器は専門職やメーカー、体調は医療機関、休業の条件は勤務先や労働局へ確認してください。介護制度・利用可否・自己負担はご本人の条件で異なります。担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに確認を。