磐田の認知症 / 2026年8月30日

磐田市の認知症見守りオレンジシール|貼るだけの備え

見守りオレンジシールの使い方を表したイラスト。玄関の上がり框の下に一組の靴が並び、それぞれにオレンジ色の丸いシールが貼られている。奥には障子と杖が見える
記事の内容をもとに作成したAI生成イラストです。実在する人物・施設ではありません。

「親が一人で出かけて帰れなくなったら、と思うのですが、GPSまでは踏み切れなくて」

磐田市には、靴やサンダル、杖に貼る「見守りオレンジシール」があります。正式名は磐田市認知症高齢者等事前登録事業。申請先は担当の地域包括支援センターで、持ち物は本人の写真です。行方が分からなくなったら警察署にシールの番号を伝えると、同報無線といわたホッとメールで番号が伝わります。

見守りオレンジシールは、登録番号を身の回りの品に貼っておく仕組み

正式名称は「磐田市認知症高齢者等事前登録事業(見守りオレンジシール)」です。磐田市のウェブサイトの該当ページは2026年6月16日に更新されています。事業の目的は、市の説明では「高齢者等の行方不明時の早期発見・早期対応を目的とした地域の見守り体制の整備のため、認知症などで行方不明となる可能性がある方の情報を事前に登録していただく」こととされています。

やることは、名前のとおりです。登録番号が書かれたシールを受け取り、それを貼る。市の案内はこう書いています。「見守りオレンジシールを靴やサンダル、杖など普段から使用している身の回りの品に貼り付けていただくことで、行方不明時の捜索の手がかりとなります。」

位置を測る機能はありません。電池も充電も要りません。本人が持ち歩くことを意識する必要もありません。靴に貼ってあれば、靴を履いて出た時点で備えは効いています。ここが、端末を持たせる方式との一番の違いです。

私は磐田市見付で、サービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターの3つを運営しています。サービスを売る側です。その立場でこの記事を書くと「うちに来てください」に着地しそうになるので、先に断っておきます。この記事は、まだどのサービスも使っていないご家庭のための話です。シールを貼るのに、要介護認定も、事業所との契約も要りません。

磐田市の見守りオレンジシールについて、登録の3手順と行方不明になったときの3手順を並べた図 磐田市認知症高齢者等事前登録事業(見守りオレンジシール)の流れ図。登録するときは3つの手順。1つ目、担当の地域包括支援センターに指定の登録届を出す。本人の写真を添える。2つ目、登録番号を記載した見守りオレンジシールを受け取る。3つ目、靴やサンダル、杖など普段から使用している身の回りの品に貼る。行方が分からなくなったときも3つの手順。1つ目、警察署へ相談し、見守りオレンジシールの番号を伝える。2つ目、同報無線とメール配信サービスのいわたホッとメールでシール番号が伝わる。3つ目、それが捜索の手がかりになる。磐田市の計画では、認知症高齢者等事前登録者数は2022年度末で182人、2026年度末の目標は240人。参考として、磐田市の65歳以上の人口は2026年7月末で49,092人。 見守りオレンジシール:登録の3手順と、いざというときの3手順 磐田市認知症高齢者等事前登録事業 ※GPS端末ではなく、登録番号を照会する仕組み 登録するとき 1. 地域包括支援センター 担当のセンターに登録届を 出す。本人の写真を添える 2. シールを受け取る 登録番号を記載した 見守りオレンジシール 3. 貼る 靴・サンダル・杖など 普段から使う身の回りの品 行方が分からなくなったとき 1. 警察署へ相談 その際、見守りオレンジ シール番号を伝える 2. 番号が伝わる 同報無線とメール配信 「いわたホッとメール」 3. 捜索の手がかりに 見かけた人は声をかけ、 警察署・市・包括へ連絡 登録者数(磐田市の計画の指標) 2022年度末の実績  182人 → 2026年度末の目標  240人 参考:磐田市の65歳以上は49,092人(2026年7月末。年齢別人口表の5歳階級を筆者が合算)
磐田市「磐田市認知症高齢者等事前登録事業(見守りオレンジシール)」(2026年6月16日更新)と「健幸いわた いきいき長寿プラン」の記載内容をもとに作成した図です(2026年8月30日確認)。65歳以上の人数は市が公表した年齢別人口表の階級を筆者が合算した値です。

申請先は市役所ではなく、担当の地域包括支援センター

この事業でつまずきやすいのが申請先です。市役所やiプラザの窓口ではなく、担当の地域包括支援センターで登録します。磐田市には中学校区ごとに7か所あり、親御さんの住所で担当が決まります。センターの一覧と役割は地域包括支援センターとケアマネの違い|磐田市にまとめました。

手続きは、指定の『登録届』に必要事項を記入し、本人の写真を添えて出す形です。写真は登録届の添付書類として市が明記しています。登録が済むと、登録番号を記載した見守りオレンジシールを受け取れます。申請できるのは本人とご家族等です。制度そのものの担当は健康福祉部 高齢者支援課 給付グループ(磐田市国府台57-7 iプラザ3階、電話0538-37-4869、午前8時30分から午後5時15分)です。

登録した情報について、市はこう書いています。「登録した情報は、関係機関で共有することで地域での見守り、行方不明時の早期発見・早期対応につなげています」。共有される先が「関係機関」としか書かれていないので、どこまで広がるのかは公開情報からは読み取れません。気になる方は、登録の場で聞いてください。

登録後に住所や緊急連絡先が変わったとき、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・グループホームなどに入所したときは、申請した地域包括支援センターまたは市に連絡し、変更届か取消届を出します。ここは忘れられやすいところです。

行方が分からなくなったら、警察署にシールの番号を伝える

いざというときの流れも、市のページに書かれています。「登録されたご家族の行方が分からなくなってしまった時は、警察署へ相談しましょう。その際、見守りオレンジシール番号を伝えると、同報無線やメール配信サービス『いわたホッとメール』でシール番号が伝わり、捜索の手がかりとなります。」

順番として、家族が最初に連絡するのは警察署です。市でも地域包括支援センターでもありません。番号を伝えると、同報無線と「いわたホッとメール」で番号が流れます。名前や住所ではなく番号が流れるので、個人情報がそのまま拡散されない形になっています。

逆に、シールを貼っている方を見かけた場合について、市はこう書いています。「見守りオレンジシールを付けている方が道に迷っていたら、やさしく声をかけて必要に応じて警察署や市、地域包括支援センターへご連絡をお願いします。」つまりこの仕組みは、家族だけでは完結しません。番号を見た誰かが動くことが前提です。

「いわたホッとメール」は事前に登録が必要な市のメール配信サービスです。登録届を出したら、家族の側もこのメールを受け取れるようにしておくほうが筋が通ります。案内チラシには登録用のあて先(t-iwata@sg-p.jp)が載っています。

登録者は182人。65歳以上49,092人に対して0.37%にあたる

数字を1つ置きます。磐田市の「健幸いわた いきいき長寿プラン」(第10次高齢者保健福祉計画・第9期介護保険事業計画、計画期間は2024年度から2026年度)は、認知症高齢者等事前登録者数を指標に採っています。2022年度末の実績が182人、2026年度末の目標が240人です。

この182人という数を、私の商売の感覚で割り戻してみます。磐田市が公表している年齢別人口表(2026年7月末現在)の5歳階級を合算すると、65歳以上は49,092人です。この合算は私が計算した値で、市が公表した合計欄ではありません。182人を49,092人で割ると0.37%。1,000人に4人弱です。目標の240人まで増えても0.49%にとどまります。

同じ計画の別の指標と並べると、輪郭がはっきりします。認知症サポーターは2022年度で19,521人、目標26,100人。認知症カフェの年間参加者は848人、目標1,400人。支える側を増やす取り組みは万単位で進んでいて、備える側の登録は百単位です。

もう1つ、同じ計画の一文を引きます。「本市でも、要介護(要支援)認定を受けた人のなかで認知症高齢者日常生活自立度がⅡa以上の人は7割近くを占め、要介護(要支援)認定者の増加にともなって認知症高齢者も増加する見込みです。」認定を受けている方の7割近くが該当する状態で、事前登録は182人。この差が何を意味するのかは、私には断定できません。必要のない方が多いのか、知られていないのか、必要でも登録に踏み切れないのか。数字だけでは分かりません。

GPS端末を貸す事業は、磐田市の公開情報では見当たらなかった

言い切っておきます。GPSにするかシールにするか、で迷っている方がいたら、迷う前提が少し違います。磐田市の公開情報を確認した範囲では、認知症の方にGPS端末を貸し出す事業が見当たりませんでした(2026年8月30日確認)。

確認した先は3つです。市のウェブサイトの認知症のカテゴリに並ぶ各ページ、「高齢者等在宅福祉サービス」(2026年7月9日更新)が挙げる11事業、そして第10次高齢者保健福祉計画の本文。11事業は、はりきゅうマッサージ治療費助成、食の自立支援、タクシー利用料金助成、紙おむつ購入費助成、訪問理美容、寝具洗濯乾燥等、緊急通報システム、短期入所、在宅介護手当、外国人高齢者福祉手当、補聴器購入費助成で、位置探索にあたるものはありません(磐田市の高齢者等在宅福祉サービス、使える11事業)。

他の自治体には端末の貸与や購入費助成を行っているところがあります。磐田市にそれがない、というのが今の状況です。ですから磐田で暮らす親御さんについては、GPSは市の事業ではなく民間サービスを自費で契約するかどうかの話になり、シールは市の事業として無償かどうかも含めて窓口で確認する話になります。同じ土俵の選択肢ではありません。

ここで、私が確認できなかったことも書いておきます。シールが何枚もらえるのか、大きさや材質はどうか、費用がかかるのかどうか。この3つは、市のページにも案内チラシからも読み取れませんでした。チラシの1ページ目が画像で、文字として取り出せなかったためです。無料だと書いてあるページも見つけられなかったので、この記事では「無料です」と書きません。登録の場で確認してください。

同じ窓口で、個人賠償責任保険も一緒に申請できる

見守りオレンジシールとセットになっている仕組みがもう1つあります。磐田市認知症高齢者等個人賠償責任保険事業です。市のページは2026年6月16日更新で、費用について「市が一括加入するため、被保険者の自己負担額はありません」と書かれています。補償の上限は1億円です。

対象になるのは、見守りオレンジシールの登録者であること、そして本人と世帯全員が市税等を滞納していないこと。この2つを満たす方です。申請場所も同じく担当の地域包括支援センターで、オレンジシールの登録と一緒に申請できます。後日、市から『保険対象申請結果通知書』が届きます。

補償の例として市が挙げているのは、線路に立ち入って電車が遅れた場合の損害、他人にけがをさせた場合、他人の物を壊した場合です。認知症の方の外出に家族がいちばん身構えるのは、実はここだと思います。見つからないことより、見つかったあとに何が起きるか。2つを同じ窓口で同時に申請できるのは、よくできた組み立てです。認知症基本法が家族に何を変えたかは認知症基本法とは?2024年1月施行で家族に変わることに整理しました。

良い点は2つ、注文したい点も2つ

この事業について、良い点から数えます。1つ目は、申請の入口が地域包括支援センターに寄せられていることです。認知症に関して磐田市が用意している仕組みは、入口がほぼここに集まっています。家族が覚える連絡先が1つで済みます。2つ目は、シールに登録番号だけを載せていることです。名前や住所を書いたタグを親に身につけさせることには、私なら抵抗を感じます。番号なら、拾った人が本人を特定できません。

その上で、注文が2つあります。1つ目は、費用と枚数がウェブサイトに書かれていないことです。無料なのかどうかは、申し込むかどうかを決める前に知りたい情報です。案内チラシが画像のPDFなので、文字で検索しても出てきません。ページ本文に1行書き足すだけで済む話だと思います。

2つ目は、連絡先の課が使い分けられていることです。制度の担当と申請先は高齢者支援課 給付グループですが、見かけたときの連絡先には市の担当課(地域包括ケア推進グループ、0538-37-4831)が書かれています。市の中では役割が違うのだと思いますが、シールを見つけた通行人がそこまで読み分けるとは考えにくい。一事業者としては、「迷ったらここ」の番号を1つ太字にしておいてほしいと思っています。

運営する側から言うと、シールは「まだ決めていない家族」のための備え

ここからは私の意見です。介護現場の一場面として書ける記録が手元にないので、体験談ではなく考えとして書きます。

親の物忘れが気になり始めた家族が、まず考えるのは「施設を探すべきか」です。その次に「GPSを持たせるべきか」。どちらも大きい決断で、しかも本人の同意が要ります。同意が取れないまま話が止まり、止まっている間に何もない状態が続く。これがいちばん危ない期間だと私は思っています。

見守りオレンジシールが効くのは、この期間です。本人に新しい持ち物を増やさせません。行動を変えさせません。靴の裏に貼るだけなので、本人が意識する場面もほとんどありません。決断を先送りしたまま、備えだけを1つ先に置けます。

今日、施設を決める必要はありません。GPSを買う必要もありません。診断がついている必要すらありません。市の案内が対象としているのは「認知症などで行方不明となる可能性がある方」で、診断名が条件になっていません。まだ何も決めていない段階で貼れる備えは、そう多くありません。磐田で認知症かもと思ったら、最初の相談先はどこかに書いたとおり、最初の電話は病院ではなく地区の地域包括支援センターです。その電話のついでに、シールの話も聞けます。

今日できる確認は3つ

今日、決めることは何もありません。次の3つだけ確かめておくと、地域包括支援センターに電話する日に話が早くなります。

1. 親御さんの中学校区を確認する磐田市は中学校区で担当の地域包括支援センターが決まる。城山・向陽/中部/南部/豊岡/豊田/竜洋/福田の7か所
2. 本人の写真があるか確認する登録届に本人の写真を添える。手元になければ、次に会ったときに1枚撮っておく
3. 普段履いている靴を1足決めておくシールを貼る場所は、いちばんよく履く靴。何足にも貼るより、外出時に必ず履く1足を決めるほうが確実

3つ目は、家族の側の準備です。市が指定しているわけではありません。ただ、貼る物が決まっていないと、シールを受け取ってから机の引き出しに入ったままになります。

見守り登録のあとに確かめる保険の申請と結果通知は、磐田市の認知症賠償責任保険|申請前の確認で整理しています。

よくあるご質問

見守りオレンジシールはどこで申請しますか。

担当の地域包括支援センターです。磐田市には中学校区ごとに7か所あり、親御さんの住所で担当が決まります。市役所ではありません。指定の登録届に必要事項を書き、本人の写真を添えて出すと、登録番号を記載した見守りオレンジシールを受け取れます。申請できるのは本人とご家族等です。制度の担当は高齢者支援課 給付グループ(0538-37-4869)です。

シールはどこに貼るのですか。GPSではないのですか。

靴やサンダル、杖など、普段から使っている身の回りの品に貼ります。GPS端末ではありません。磐田市の案内は「靴やサンダル、杖など普段から使用している身の回りの品に貼り付けていただくことで、行方不明時の捜索の手がかりとなります」と書いています。位置を測る機能はなく、シールに記載された登録番号を照会して身元を確かめる仕組みです。

施設に入所したら、そのままにしておいていいですか。

届出が必要です。磐田市は、住所や緊急連絡先が変わったとき、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・グループホームなどに入所したときは、申請した地域包括支援センターまたは市の高齢者支援課に連絡し、変更届または取消届を出すよう案内しています。登録情報が古いままだと、いざというときの連絡先が使えません。

著者・大石浩之(富士ヶ丘サービス代表取締役・宅地建物取引士)の顔写真

この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール

参考にした公式情報

制度・利用条件は個別の状況と時期で変わります。ここに書いたのは2026年8月30日時点の一般的な整理です。シールの枚数・仕様・費用は市の公開情報から確認できなかったため記載していません。登録の可否や必要書類は、担当の地域包括支援センター、または磐田市高齢者支援課 給付グループ(0538-37-4869)でご確認ください。ご本人の介護サービスについては、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市の窓口にご相談ください。

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