介護の基本 / 2026年8月28日

認知症基本法とは?2024年1月施行で家族に変わること

認知症基本法とは?2024年1月施行で家族に変わることの内容を表したAI生成イラスト
記事の内容をもとに作成したAI生成イラストです。実在する人物・施設ではありません。
認知症基本法のうち、家族の側から読める4か所の条文を示した図 共生社会の実現を推進するための認知症基本法の条文から、家族に関係する4か所を抜き出した図。第9条は認知症の日が9月21日、認知症月間が9月1日から30日までであること。第17条は意思決定の支援と消費生活の被害防止の啓発。第19条は認知症の人または家族等からの相談に総合的に応じる体制の整備。第12条第3項と第13条第3項は、都道府県と市町村が計画の案を作るときに家族等の意見を聴くよう努めること。図の下部には、国の基本計画は策定が義務、都道府県と市町村の計画は努力義務であることを記している。 共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和5年法律第65号) 2023年6月14日成立 / 2023年6月16日公布 / 2024年1月1日施行 全37条 家族の側から読める条文は、この4か所 第9条 認知症の日・認知症月間 認知症の日は9月21日。認知症月間は9月1日 から30日まで。国と地方公共団体が行事を 奨励する日として決まった 第17条 意思決定の支援と権利の保護 意思決定の支援に関する指針の策定、分かり やすい情報提供、消費生活における被害を 防止するための啓発 第19条 相談体制の整備等 「認知症の人又は家族等からの各種の相談」 に総合的に応じられる体制の整備。孤立の 防止、関係機関の紹介、情報提供と助言 第12条3項・第13条3項 意見を聴く 都道府県・市町村が計画の案を作るときは、 あらかじめ認知症の人及び家族等の意見を 聴くよう努めなければならない 計画づくりの重さは、国と自治体で違う 第11条 国の基本計画=「策定しなければならない」(義務) / 第12条 都道府県・第13条 市町村=「策定するよう努めなければならない」(努力義務)
条文の内容をもとに作成した図です。条番号と原文の語は厚生労働省 法令等データベースの条文(2026年8月28日確認)によります。

「認知症基本法って、家族に何かしてくれる法律ですか」

家計に直接お金が出る法律ではありません。共生社会の実現を推進するための認知症基本法は2023年6月14日に成立し、2024年1月1日に施行された理念の法律です。ただし第19条が、家族からの相談に総合的に応じられる体制を整えるよう国と地方公共団体に求めています。窓口へ行く根拠にはなります。

認知症基本法は2024年1月1日施行。正式名称は最後まで読むと長い

「認知症基本法」と呼ばれている法律の正式名称は、共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和5年法律第65号)です。衆議院の議案審議経過情報によれば、衆議院本会議での可決が令和5年6月8日、参議院本会議での可決が令和5年6月14日。この6月14日が成立日で、公布はその2日後の6月16日です(2026年8月28日確認)。

施行日が2024年1月1日になったのは、附則が「この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」としていたためです。その政令(令和5年政令第366号)で令和6年1月1日と決まりました。成立・公布・施行の3つが別の日付なので、ネット上の解説でも日付がばらついています。ここは条文と議案審議経過情報で確かめました。

法律上の「認知症」の定義も、第2条にあります。「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態」。物忘れが増えた、という状態と、この定義は同じではありません。

基本理念は7つ。家族が名指しで出てくるのは第五号だけ

認知症基本法の第3条は、基本理念を7つの号に分けて並べています。第一号は全ての認知症の人が基本的人権を享有する個人として自らの意思によって日常生活及び社会生活を営めるようにすること、第二号は国民が正しい知識と理解を深めること、第三号は障壁となるものの除去と社会参画の機会の確保、第四号は保健医療サービス及び福祉サービスが切れ目なく提供されること、第六号は研究の推進とその成果を国民が享受できる環境の整備、第七号は教育・地域づくり・雇用・保健・医療・福祉といった各分野にまたがる総合的な取組として行うこと。

家族が名前で出てくるのは、第五号です。原文は、認知症の人だけでなく「その家族その他認知症の人と日常生活において密接な関係を有する者(以下「家族等」という。)に対する支援」が適切に行われ、認知症の人及び家族等が地域において安心して日常生活を営むことができるようにすること、となっています。この「家族等」という言い方を、以降の条文が使い回します。

介護保険法は、要介護認定を受けた本人を給付の対象に置いています。家族は法律の主語になりにくい。認知症基本法は家族を条文の中に書き込んだ。7つのうち1つだけですが、そこは介護保険法にない書き方です。

家族の側から読める条文は4か所ある

認知症基本法は全37条あります。そのうち、家族が自分の用事に引き寄せて読める条文は4か所です。条番号を挙げます。

第9条認知症の日は9月21日、認知症月間は9月1日から30日まで。国と地方公共団体は、認知症の日にその趣旨にふさわしい事業を実施するよう努め、認知症月間にふさわしい行事が実施されるよう奨励しなければならない。
第17条認知症の人の意思決定の適切な支援に関する指針の策定、認知症の人に対する分かりやすい形での情報提供の促進、消費生活における被害を防止するための啓発。
第19条認知症の人「又は家族等」からの各種の相談に総合的に応じることができる体制の整備。孤立を防ぐため、互いに支え合うために交流する活動への支援、関係機関の紹介、情報の提供及び助言。
第12条第3項
第13条第3項
都道府県・市町村が推進計画の案を作るときは、あらかじめ認知症の人及び家族等の意見を聴くよう努めなければならない。

このうち、今日から使えるのは第19条です。相談先を探している家族にとって、「相談に応じる体制を整えるのは行政の側の仕事だと法律に書いてある」というのは、電話をかける後押しになります。磐田市の相談の入口は地区ごとの地域包括支援センターで、担当は中学校区で決まります。場所と電話番号は磐田市の介護相談窓口、敬老の日(9月21日)前に確認にまとめました。診断の受け方の順番は磐田で認知症かもと思ったら、最初の相談先はどこかのほうに書いています。

良い点は2つ。注文したい点も2つある

認知症基本法について、私が良いと思う点を先に2つ数えます。1つは、第9条で日付が決まったことです。認知症の日は9月21日、認知症月間は9月1日から30日まで。行政の催しがこの期間に集まるので、家族が「そのとき動く」と決めやすくなりました。9月21日は2026年(令和8年)は敬老の日と重なります(敬老の日2026年は9月21日)。帰省の予定と行政の催しが同じ週に来る、という年です。

もう1つは、第19条が相談の主体として家族等を並べて書いたことです。介護の相談窓口は、これまでも家族の相談を受けてきました。ただ、法律の条文に「又は家族等」と入っているかどうかは、体制を作る側にとっては別の話になります。予算と人の配置は、条文を根拠に動きます。

その上で、一事業者として注文したい点も2つあります。1つは、計画づくりの重さが国と自治体で違うことです。第11条は国の認知症施策推進基本計画について「策定しなければならない」と書いています。ところが第12条の都道府県計画も、第13条の市町村計画も「策定するよう努めなければならない」で、努力義務です。家族が実際に相談する窓口を持っているのは市町村のほうなので、義務の重さが逆転しているように私には見えます。

もう1つは、率直に言って、この法律で家族の家計は1円も動かないことです。制度としては筋が通っています。しかし私のところに来る相談で最初に出るのは、いつも「それでいくらかかるのか」と「誰がいつ役所へ行くのか」の2つです。認知症基本法を第1条から第37条まで読んでも、この2つには答えが書いてありません。お金と段取りの答えは、介護保険法と市の各制度の側にあります。理念の法律に、家計の答えを探しに行かないほうがいい。これは批判ではなく、読む場所が違うという話です。

運営する側から言うと、変わったのは制度ではなく聞かれ方

私は磐田市見付で、サービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターの3つを運営しています。住まい、通所、訪問で、契約はそれぞれ別のサービスです。つまり私は、この記事を読んだご家族にサービスを売る立場にある側で、利害があります。そこは隠しません。

以下は特定のご家族の事例ではなく、私の考えです。認知症基本法が施行されて、事業所の運営基準が変わったわけではありません。加算が新設されたわけでもありません。変わりつつあるのは、家族からの問い合わせの立て方のほうだと私は見ています。「入れるところはありますか」から「本人の意思をどう確かめればいいですか」へ。第17条が意思決定の支援を条文に書いた影響が、じわじわ出てきているのだとしたら、それは制度の変化より大きい変化です。

迷っていることも書いておきます。磐田市が第13条の市町村認知症施策推進計画を策定しているかどうか、私は今日の時点で確認できていません。努力義務なので、独立した計画としてではなく、高齢者福祉に関する既存の計画の中に組み込んでいる自治体もあります。ここは確かめずに書けないので、未確認のまま置いておきます。

今日できる確認は3つ

認知症基本法を読み込む必要はありません。家族の側でこの法律を実際に使うなら、今日のうちに終わることが3つあります。

  • 地区の地域包括支援センターの電話番号を、親の家の電話のそばに貼る。第19条が体制の整備を求めているのは、この窓口のことです。磐田市は7か所あり、担当は住所ではなく中学校区で決まります。
  • 9月1日から30日の間に、住んでいる市の催しの案内を1つ見る。第9条で認知症月間が9月と決まっているため、行政の催しはこの月に集中します。参加しなくても、どこが主催しているかを見るだけで相談先の見当がつきます。
  • 本人が元気なうちに、通帳と印鑑と保険証の置き場所だけ聞いておく。第17条が消費生活における被害の防止を挙げているのは、そこが実際に問題になるからです。財産の管理そのものは法律家の領分なので、置き場所の確認までにとどめてかまいません。

親の住まいをどうするかを、今日決める必要はありません。在宅で続ける組み立ては訪問介護とデイサービスのページに、住み替えを含めて考える場合の材料は介護を知るに置いています。うちに相談していただかなくても構いません。今日、確認先が1つ増えれば十分です。

よくあるご質問

認知症基本法ができて、介護保険の自己負担やサービスの中身は変わりましたか。

変わっていません。共生社会の実現を推進するための認知症基本法は、基本理念と国・地方公共団体の責務、計画と推進体制を定めた法律で、保険給付の額やサービスの種類を定める条文はありません。自己負担の割合や区分支給限度基準額は介護保険法の側の話です。自己負担の確認は負担割合証と、担当のケアマネジャーへどうぞ。

認知症基本法の成立日・公布日・施行日はいつですか。

衆議院の議案審議経過情報によると、参議院本会議での可決は令和5年6月14日です。公布は令和5年6月16日で、法令番号は令和5年法律第65号。施行日は附則が「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」としており、令和5年政令第366号で令和6年1月1日と定められました。成立日と公布日は別の日付です。

9月21日の認知症の日に、家族は何をすればいいですか。

法律は国民に義務を課していません。第9条が定めているのは、国と地方公共団体が認知症の日にふさわしい事業の実施に努め、9月1日から30日までの認知症月間にふさわしい行事が実施されるよう奨励することです。家族の側で使うなら、住んでいる市の催しの案内を見て、地域包括支援センターの場所と電話番号を控えておく日にするのが現実的だと私は考えています。

著者・大石浩之(富士ヶ丘サービス代表取締役・宅地建物取引士)の顔写真

この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール

参考にした公式情報

制度・自己負担・利用条件は個別の状況と時期で変わります。ここに書いたのは2026年8月28日時点の一般的な整理です。条文の要約は私が読み取ったもので、法令の解釈そのものではありません。磐田市が市町村認知症施策推進計画を策定しているかどうかは、この記事の時点では未確認です。ご本人の状況にあてはまるかどうかは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市の窓口でご確認ください。

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