「親の物忘れが進んできました。サ高住とグループホーム、どちらがいいですか」
違うのは設備ではなく、契約する中身です。サービス付き高齢者向け住宅は賃貸住宅で、介護は別に契約します。グループホームは介護保険サービスそのもの。しかも地域密着型サービスなので、原則としてその市町村の被保険者しか使えません。認知症の診断と住民票が、先に選択肢を絞ります。
サ高住は住まいの契約、グループホームは介護の契約
サービス付き高齢者向け住宅とグループホームの根本的な違いは、何を契約するかにあります。サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)第5条にもとづいて都道府県知事の登録を受けた賃貸住宅です。契約するのは住まい。必ず付いてくるのは、状況把握サービス(入居者の心身の状況を把握し、その状況に応じた一時的な便宜を供与するサービス)と生活相談サービスの2つで、介護保険サービスは別の事業者と別に契約します。
一方のグループホームは、正式名称を認知症対応型共同生活介護といいます。介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第20項の定義はこうです。「要介護者であって認知症であるもの(その者の認知症の原因となる疾患が急性の状態にある者を除く。)について、その共同生活を営むべき住居において、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことをいう。」つまり、契約するのは介護保険サービスそのもの。住まいは、そのサービスを行う場所として法律に書かれています。
賃貸借契約を結ぶのか、介護保険サービスの利用契約を結ぶのか。ここが変わると、退去を求められる条件も、費用の内訳も、介護が重くなったときに何が起きるかも変わります。サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違いを整理した記事も、同じ「契約の形」の話です(サ高住と有料老人ホームの違いを磐田の目で見る)。
グループホームには、市町村の壁がある
グループホームを検討するとき、費用より先に確認すべきなのは住民票の場所です。認知症対応型共同生活介護は、介護保険法第8条第14項が定める地域密着型サービスに含まれます。そして同法第78条の2第1項は、地域密着型サービス事業者の指定について「当該指定をする市町村長がその長である市町村が行う介護保険の被保険者に対する地域密着型介護サービス費及び特例地域密着型介護サービス費の支給について、その効力を有する」と定めています。
読み下すと、市が指定したグループホームで保険給付が出るのは、その市の被保険者に対してだけ、ということです。厚生労働省の介護サービス情報公表システムも、地域密着型サービスについて「原則としてお住まいの市区町村以外の施設・事業所のサービスは利用できません」と説明しています。磐田市内のグループホームを指定するのは磐田市で、高齢者支援課の業務に地域密着型サービス事業所の指定・指導が入っています。
例外はあります。同条第4項第4号と第9項が、市外に事業所がある場合の所在地市町村長の同意という仕組みを置いています。ただ、これは自治体同士の協議であって、家族が申し込みのときに使える手続きではありません。実務上は「浜松市に住む親を、磐田市のグループホームへ」という組み合わせは、そのままでは通らないと考えたほうがいい。サービス付き高齢者向け住宅には、この壁がありません。賃貸住宅なので、市外からでも県外からでも申し込めます。
数字で見ると、グループホームは横ばい、サ高住は棟数で並ぶ
全国のグループホームは14,341事業所です。厚生労働省の令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査(2025年12月19日公表/2024年10月1日現在)によると、認知症対応型共同生活介護は14,341事業所で、前年から79事業所、0.6%の増加。地域密着型通所介護が235事業所(1.2%)減っている中で、微増です。
この14,341という数を、規模の感覚に置き換えます。同調査の詳細票によれば、定員15〜19人の事業所が9,099か所と最も多く、5〜9人が4,202か所。指定基準(平成18年厚生労働省令第34号)第93条は、1つの共同生活住居の入居定員を5人以上9人以下、1事業所あたりの共同生活住居の数を1以上3以下と定めています。つまり定員15〜19人の事業所とは、9人ずつのユニットを2つ持っている形が中心ということです。1棟に何十人も暮らす施設ではありません。
比較のために、サービス付き高齢者向け住宅の登録は全国8,317棟・291,009戸(国土交通省 サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム/2026年7月末時点)。棟数ではグループホームのほうが多く、戸数で見れば桁が違います。同じ「認知症の親の住まい」を探していても、母数がまったく違う2つの市場を見ていることになります。
グループホームという仕組みの、良い点2つと注文2つ
グループホームの制度設計で、私が良いと思う点を先に2つ数えます。1つは、1ユニット9人以下という上限が法令で決まっていることです。指定基準第93条第2項の数字で、事業者の裁量では動かせません。認知症のある方にとって、覚える顔と名前の数が9人までに抑えられている意味は小さくない。2つ目は、居室の定員が原則1人と定められていること(同条第3項)。利用者の処遇上必要と認められる場合に2人にできる例外はありますが、原則は個室です。
その上で、一事業者として注文したい点も2つあります。1つは、市町村の壁の説明が、家族の手元に届く形になっていないことです。介護保険法第78条の2は条文を読めば分かりますが、住まいを探している家族が最初に見るのは物件情報のほうです。申し込みの直前に「住民票が要ります」と言われるのと、探し始める前に知っているのとでは、動き方が違います。
もう1つは、要支援1が対象外だという線引きです。制度としては筋が通っています。認知症対応型共同生活介護は要介護者が対象で、予防給付にあたる介護予防認知症対応型共同生活介護は、介護保険法第8条の2第15項と施行規則第22条の20により要支援2に限られます。ただ、家族が住まいを考え始めるのは、たいてい認定が出るより前です。制度の入口が要支援2からなのに、家族の不安の入口はもっと手前にある。この時間差を、どこの窓口が引き受けるのかがはっきりしていません。
運営する側から言うと、うちのサ高住には25㎡未満の住戸がある
私は磐田市見付で、サービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」(46戸・2014年7月開設・入居は原則60歳以上)と、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営しています。3つは別のサービスで、住まいの契約と介護サービスの契約は別です。この記事を読む方に自社の住まいを売る立場でもあるので、自分に不利なことを先に書きます。
連理枝の住戸面積は19.15㎡から31.01㎡です。サービス付き高齢者向け住宅の登録基準は各居住部分25平方メートル以上ですが、居間・食堂・台所などの共用部分が高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合は18平方メートル以上でよい、という但し書きがあります。うちの小さい住戸は、この但し書きのほうに乗っています。25㎡と19.15㎡では、置ける家具の量が違います。見学のときは、パンフレットの面積ではなく、実際に持っていきたいタンスの寸法を測ってから来ていただくほうが早い。
以下は私の考えです。認知症があるからグループホーム、という決め方を私はしません。判断の順番は、①認知症の診断が出ているか ②要介護度は何か ③住民票はどこか ④介護がどれくらい重くなったときに次を考えるか、の4つだと思っています。①〜③のどれかで選択肢が消えることがあるので、費用の比較はそのあとです。
迷っていることも書きます。どちらが向いているかは、私にはご本人を見ないと言えません。同じ要介護度でも、集団の中で落ち着く方と、人が多いほど混乱する方がいます。パンフレットの間取りと料金表を並べても、そこは分かりません。だから私は、月額の比較表を先に作ることをすすめていません。
今日できる確認は3つ
今日、住まいを決める必要はありません。手元と電話で終わることが3つあります。
- 親の住民票がどこにあるかを確かめる。グループホームを選択肢に入れるなら、ここが最初です。すでに子の家に同居していて住民票だけ実家にある、という状態はよくあります。
- 要介護認定の区分と、認知症の診断の有無を書き出す。要支援1なら、グループホームは制度上の対象外です。診断がまだなら、順番は受診が先になります(磐田で認知症かもと思ったら、最初の相談先はどこか)。
- 担当のケアマネジャーに、市内の地域密着型サービスの空き状況の調べ方を聞く。グループホームの指定と指導をしているのは市なので、市内の事業所の一覧は市の側で把握されています。担当がいない段階なら、地区の地域包括支援センターが入口です。
費用の考え方は、施設の種別によって決まり方そのものが違います(サ高住と特養の費用差)。認知症についての制度の全体像は、2024年1月に施行された法律の側から整理しました(認知症基本法とは?2024年1月施行で家族に変わること)。うちのサービス付き高齢者向け住宅の条件は住まいのページに置いてあります。読んで、今日は候補から外していただいてかまいません。
よくあるご質問
グループホームは、住んでいる市町村の外でも申し込めますか。
原則としてできません。認知症対応型共同生活介護は介護保険法第8条第14項の地域密着型サービスで、同法第78条の2第1項により、指定した市町村長がその長である市町村の被保険者への給付についてのみ効力を持ちます。厚生労働省の介護サービス情報公表システムも「原則としてお住まいの市区町村以外の施設・事業所のサービスは利用できません」と説明しています。
要支援でもグループホームに入れますか。
要支援1は利用できません。介護保険法第8条第20項の認知症対応型共同生活介護は要介護者が対象で、予防給付にあたる介護予防認知症対応型共同生活介護は、同法第8条の2第15項と施行規則第22条の20により要支援2に限られます。厚生労働省の介護サービス情報公表システムにも「介護予防認知症対応型共同生活介護は、要支援1の人は利用できません」と明記されています。
サ高住とグループホームでは、部屋の広さはどれくらい違いますか。
基準の作り方が違います。サービス付き高齢者向け住宅の登録基準は各居住部分の床面積25平方メートル以上(居間・食堂・台所などの共用部分が十分な面積を持つ場合は18平方メートル以上)。グループホームは指定基準で1居室の床面積7.43平方メートル以上、定員は原則1人です。広さの数字だけを並べても比較にはなりません。
この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール
参考にした公式情報
- 厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」(2025年12月19日公表/2026年8月確認)
- e-Gov 法令検索「介護保険法」第8条第14項・第20項、第78条の2(2026年8月確認)
- e-Gov 法令検索「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」第93条(2026年8月確認)
- e-Gov 法令検索「高齢者の居住の安定確保に関する法律」第5条・第7条(2026年8月確認)
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」(2026年8月確認)
制度・自己負担・利用条件は個別の状況と時期で変わります。ここに書いたのは2026年8月28日時点の一般的な整理です。事業所ごとの条件・費用・受け入れの可否は、この記事の内容とは別に事業所ごとに異なります。空室の状況は日々変わるため掲載していません。「9人ずつのユニットを2つ持つ形が中心」という読み取りは、定員階級別の事業所数から私が推測したもので、公表された分析ではありません。ご本人の状況にあてはまるかどうかは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市の窓口でご確認ください。