「親のもの忘れが増えました。もの忘れ外来に行く目安ってあるんでしょうか」
回数や期間で受診の目安を示した公的資料を、私は見つけられませんでした。磐田市内に「もの忘れ外来」の名前を掲げた窓口も見当たりません。代わりにお願いしているのは、日付・約束・薬・火の始末・お金の管理で困った日を、2週間そのまま書き残すことです。判断の材料はそこから作れます。
磐田で「もの忘れ外来」を探しても、その名前の窓口は出てこない
「もの忘れ外来」は、全国の医療機関で使われている診療の通称です。ところが磐田市内でこの名前を掲げた窓口を探すと、見つかりませんでした(2026年8月31日確認)。磐田市立総合病院が置いているのは「認知症疾患医療センター」で、同院のウェブサイトは診察の場を「脳神経内科外来」と書いています。受診には他院からの紹介状が必要です。検索窓に打ち込む言葉と、地元の医療機関が使っている言葉が一致していません。
磐田市の公式ウェブサイトの認知症のページにも、「もの忘れ相談」という名前の項目は見当たりませんでした。並んでいるのは、認知症サポーター、認知症カフェ、見守りオレンジシール、いわた認知症ハンドブック、認知症月間、認知症コールセンターといった項目です。生活の言葉で探しても、行政の言葉には届きません。検索語を「認知症疾患医療センター」に変えると、そこで初めて地元の情報が出てきます。
受診までの順番そのもの(かかりつけ医に相談し、紹介状を書いてもらってから予約する)は、磐田市の認知症、最初の相談はどこにする?に手順として書きました。この記事で扱うのは、その手前にある「そもそも行く目安があるのか」という問いのほうです。
受診の目安を数字で示した公的資料は、見つけられなかった
もの忘れの受診目安を、回数や期間や年齢で示した公的な一次情報を、私は見つけられませんでした(2026年8月31日時点)。厚生労働省の資料にも、磐田市のページにも、磐田市立総合病院のページにもありません。正直に言えば、この記事を書きながらここで詰まりました。「目安」という言葉で検索してきた方に、公的な線引きを差し出せないからです。
私は磐田市見付で、サービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターの3つを運営しています。介護サービスを売っている側です。ですから「早めに受診を」と書けば、私の商売にとって都合がよくなります。それを承知のうえで書きます。線引きは、私が勝手に作ってよいものではありません。
ないものを探し続けるより、材料を作るほうが早い。私はそう考えています。以下は特定の利用者の事例ではなく、運営する側としての私の意見です。
認知症よりも、軽度認知障害(MCI)のほうが人数は多い
厚生労働省の資料「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」によると、2022年の認知症高齢者数は443.2万人、有病率は12.3%です。同じ年の軽度認知障害(MCI)は558.5万人、15.5%。人数はMCIのほうが115.3万人多くなっています。母数は65歳以上の3,603万人です。この表は、令和5年度の老人保健事業推進費等補助金による九州大学・二宮利治教授の研究をもとに、厚生労働省が作成したものです。
認知症とMCIを合わせると27.8%で、65歳以上のおよそ3.6人に1人という割合になります。うちのふじがおか見付デイサービスは定員25人ですから、全国の割合をそのまま当てはめれば7人前後という計算です。ただし、これは目安ですらありません。実際の状態は一人ひとり違い、割合を当てはめただけの数字です。規模感をつかむためだけに書いています。
この図で私が言い切りたいのは1つです。「認知症かどうか」を白黒で判定しようとすると、人数としてはいちばん多い層が抜け落ちます。もの忘れが気になり始めた段階の親御さんは、白でも黒でもない場所にいる可能性のほうが高い。だから、受診するかどうかを白黒で決めようとする問いの立て方自体が、家族を苦しくしていると思っています。
目安の代わりに、2週間の記録を取る
私が家族にお願いしているのは、5つの場面にしぼって記録を取ることです。日付、約束、薬、火の始末、お金の管理。この5つについて、困ったことがあった日だけを書きます。何もなかった日は書きません。2週間で足ります。
理由は単純です。「最近よく忘れるんです」と口で伝えるより、日付の入った紙のほうが、医師にとっても地域包括支援センターにとっても扱いやすいからです。相談でも診察でも「いつから」は必ず聞かれます。記憶で答えると、たいてい実際より短く見積もります。
この5つを選んだのは、生活が実際に止まる順番だからです。火の始末とお金の管理は、事故と損害に直結します。薬は飲み間違いが体調に出ます。約束と日付は、周囲との関係に出ます。医学的な重症度の順ではありません。あくまで、暮らしが回らなくなる順で並べた私の実務上の並べ方です。
記録を持って相談する先は、かかりつけ医か、担当の地域包括支援センターです。磐田市には中学校区ごとに7か所あり、要介護認定を受ける前から無料で相談できます。センターと担当ケアマネジャーの役割の違いは地域包括支援センターとケアマネの違いに整理しました。
9月は認知症月間。磐田市の催しは3つある
公益社団法人認知症の人と家族の会は、国際アルツハイマー病協会が認知症への理解を進め、本人や家族への取り組みを充実させる目的で、1994年に9月21日を世界アルツハイマーデーと定めた経緯を紹介しています。日本ではこの日付が法律にも書かれています。条文の中身は認知症基本法とは|家族が知っておく3つにまとめました。
磐田市のページ「認知症月間」(2026年8月26日更新)が案内している2026年の催しは3つです。認知症啓発イベント「まちがってもいい音楽会」が9月12日(土曜)13時から15時、iプラザ2階。市民文化会館「かたりあ」のライトアップが9月15日(火曜)から21日(月曜)の夜。「2026認知症フォーラムin福田(福祉講演会)」が9月26日(土曜)10時から11時30分、福田中央交流センターです。
| 9月12日(土曜)13:00〜15:00 | まちがってもいい音楽会/iプラザ(総合健康福祉会館)2階 |
|---|---|
| 9月15日(火曜)〜21日(月曜)の夜 | 磐田市民文化会館「かたりあ」のライトアップ |
| 9月26日(土曜)10:00〜11:30 | 2026認知症フォーラムin福田(福祉講演会)/福田中央交流センター |
磐田市が2026年8月31日に追加した図書展示、認知症カフェ、講座、上映会を含む最新日程は、磐田市の認知症月間2026|家族で行ける催しで確認できます。
2026年度の標語は「忘れても 笑顔で暮らせる 街づくり」に決まりました。全国817名から1,492編の応募があったものです。国際テーマは「The Earlier You Know, The More You Can Do: A Dementia Diagnosis Matters.」で、早く知るほどできることが増える、という趣旨になっています。家族の会の「ライブ!ライトアップ2026」は9月21日(月曜・祝日)19時からYouTubeで配信されます。
良い点は2つ、注文したい点も2つ
磐田市の認知症月間の案内について、良い点から数えます。1つ目は、催しを3件とも日付・時間・会場まで書いて公開していることです。「9月は認知症月間です」で終わらせず、行ける形にしてあります。2つ目は、そのページを8月26日に更新していることです。月間が始まる前に更新されているので、予定を組む側が使えます。
そのうえで、注文が2つあります。1つ目は、「もの忘れ」という生活の言葉での入口が市のページにないことです。家族が最初に打ち込む言葉は「認知症」ではなく「もの忘れ」のほうです。2つ目は、どんな様子になったら医療につなぐのかという説明が、市の認知症のページに置かれていないことです。制度と催しの案内は充実しているのに、その手前の判断で家族は迷います。どちらも仕組みの話であって、担当者の努力の問題ではないと思っています。
今日できる確認は3つ
今日、受診を決める必要はありません。決めるための材料が1つ増えれば、それで足ります。
| 1. 検索する言葉を変える | 「もの忘れ外来 磐田」ではなく「認知症疾患医療センター」で調べ直す。磐田市立総合病院の案内にたどり着ける |
|---|---|
| 2. 記録用の紙を親御さんの家に置く | 日付・約束・薬・火の始末・お金の管理。困った日だけ書く。2週間分で相談の材料になる |
| 3. 9月の催しを1つ手帳に書く | 音楽会・ライトアップ・フォーラムのうち行けそうなもの。本人を連れて行かなくてよい。家族だけで様子を見に行ける |
1つだけ、私が確認できなかったことを書いておきます。磐田市のページ「認知症コールセンター」(2024年8月14日更新)は静岡県の認知症コールセンターを案内していますが、電話番号と受付日時はページ内に書かれていません。静岡県のサイトへの外部リンクだけです。夜や休日に相談したいご家族が最初に開くのはこのページなので、番号がその場にないのは惜しいと思いました。
よくあるご質問
磐田市に「もの忘れ外来」という名前の窓口はありますか。
2026年8月31日に調べた範囲では見当たりませんでした。磐田市立総合病院が置いているのは「認知症疾患医療センター」で、同院のページは診察の場を脳神経内科外来と書いています。受診には他院からの紹介状が必要です。検索する言葉を「認知症疾患医療センター」に変えると、地元の情報にたどり着きます。
どのくらいのもの忘れなら受診の目安ですか。
回数や期間で示した公的な受診目安を、私は見つけられませんでした(2026年8月31日時点)。私が家族にお願いしているのは、日付・約束・薬・火の始末・お金の管理の5つについて、困ったことがあった日をそのまま2週間書き残すことです。判断は医師の仕事なので、家族は材料だけを揃えます。
軽度認知障害(MCI)と認知症は、人数にどのくらい差がありますか。
厚生労働省の将来推計では、2022年の認知症高齢者数443.2万人(有病率12.3%)に対し、軽度認知障害は558.5万人(15.5%)です。人数はMCIのほうが115.3万人多くなっています。2040年の見込みは認知症584.2万人、MCI612.8万人です。医学的な線引きは医師にご確認ください。
この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール
参考にした公式情報
- 厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」(2026年8月確認)
- 磐田市立総合病院「認知症疾患医療センター」(2026年8月確認)
- 磐田市公式ウェブサイト「認知症月間」2026年8月26日更新(2026年8月確認)
- 磐田市公式ウェブサイト「認知症コールセンター」2024年8月14日更新(2026年8月確認)
- 磐田市公式ウェブサイト「地域包括支援センター」2026年6月29日更新(2026年8月確認)
- 公益社団法人認知症の人と家族の会「世界アルツハイマー月間 2026」2026年7月7日掲載・2026年8月30日更新(2026年8月確認)
- 公益社団法人認知症の人と家族の会「2026年度 世界アルツハイマー月間 標語」(2026年8月確認)
制度・自己負担・利用条件は個別の状況と時期で変わります。ここに書いたのは2026年8月31日時点の一般的な整理です。診療の要否や診断は医師が判断するもので、この記事は医学的な助言ではありません。受診の手順や予約方法は医療機関の運用で変わることがあります。ご本人の状況にあてはまるかどうかは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市の窓口でご確認ください。