
「退院後は介護医療院と老健のどちらを選べばいいですか」
違いは施設の多さではなく、退院後の目的です。老健はリハビリなどで在宅復帰・在宅支援を目指します。介護医療院は、長期療養が必要な要介護者の医療と介護、生活を一体で支えます。2024年の全国施設数は老健4214、介護医療院917ですが、数だけで本人の入所先は決められません。
一番短い答えは「在宅復帰」か「長期療養」か
厚生労働省は、介護老人保健施設を、要介護高齢者にリハビリなどを提供し、在宅復帰・在宅支援を目指す施設と説明しています。介護医療院は、主として長期に療養が必要な要介護者に、必要な医療と介護、日常生活上の世話を提供する施設です。
| 比べる軸 | 介護老人保健施設(老健) | 介護医療院 |
|---|---|---|
| 役割の中心 | リハビリなどを通じた在宅復帰・在宅支援 | 長期療養のための医療と日常生活上の介護 |
| 家族が先に聞くこと | どこへ戻ることを目標にするか | 長期に必要な医療と生活支援は何か |
| 2024年の全国施設数 | 4214施設 | 917施設 |
どちらも「退院後に入る介護施設」という一箱に入れると、役割の差が消えます。本人が自宅などへ戻る道筋を作る段階なのか、長期の療養と生活を同じ場所で支える必要があるのか。主治医、病院の退院支援担当者、ケアマネジャーと、ここを先に言葉にします。
4214対917は、人数でも空きでもない
厚生労働省の「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査」は、2024年10月1日時点の全国施設数を、老健4214施設、介護医療院917施設と集計しています。結果の公表日は2025年12月19日です。
老健は介護医療院の約4.6倍あります。4214を917で割った概算です。ただし、この差を「老健なら4.6倍入りやすい」と読んではいけません。施設数は定員、空き、地域差、受入条件を表していないからです。
前年との比較では、老健が36施設、0.8%減りました。介護医療院は126施設、15.9%増えました。介護医療院は増えていても、2024年時点の絶対数は老健より少ない。この二つを同時に見る必要があります。
数字を家族の段取りに翻訳すると、候補は一つに絞らない
全国施設数を家族の段取りへ翻訳すると、「近くにあるはず」と決めつけず、通える範囲の候補を複数確認する、となります。全国に4214施設あっても、磐田の家族が希望する時期に利用できるかは別です。
施設名を集める前に、病院側へ次の3点を聞きます。
- 退院後の目標は、自宅などへの復帰か、長期療養か
- 退院後も続く医療上の管理について、候補施設へ何を伝えるか
- 本人と家族が希望する生活を、どの書類に残すか
医療上の適否を家族だけで判定する必要はありません。必要な医療や受入可否は個別に違い、施設側の確認も要ります。家族の役目は、本人の希望と退院後の暮らしを、相談先へ渡せる言葉にすることです。
良い点は増減まで公表したこと。注文は地域で探せる導線
2024年調査の良い点は、施設数だけでなく前年からの増減数と増減率を同じ資料に載せたことです。老健が36施設減り、介護医療院が126施設増えた動きを、1枚で確認できます。
その上で注文したいのは、全国統計を見た家族が地域の候補探しへ移る道を、もっと短くすることです。統計で917と分かっても、親の退院日に間に合う候補は見つかりません。厚生労働省の介護サービス情報公表システムと、病院の退院支援を同時に使う段取りまで示されると、数字が生活につながります。
私は、施設数の大きさを安心材料として売る書き方には反対です。数字は入口であって、本人の受入可否を証明しません。
運営する側でも、施設種別だけで答えは出せない
私は大石浩之(磐田市/不動産業)です。サービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営しています。住まい、通所、訪問は別のサービスで、住まいと介護サービスの契約も別です。老健や介護医療院とも別の種別です。
以下は利用者の実話ではなく、利害のある運営者としての私の意見です。退院後の行き先を探す家族に、私は施設種別の一覧だけを渡したくありません。「帰る場所はどこか」「どの支援が続くのか」が決まらないまま見学すると、建物の新しさや説明の印象だけで比べることになるからです。
私にも迷いがあります。在宅復帰を目指すと言われても、家族が自宅介護を担えるとは限りません。長期療養が必要でも、本人が望む暮らしを一語で表せるわけではない。それでも、役割の違いを曖昧にしたまま契約へ進むより、「退所後はどこへ」「長期に必要な支援は何か」を先に聞くほうがよいと考えます。
見学で聞く質問は、種別ごとに変える
老健の候補には、在宅復帰の目標、評価の時期、退所後の調整方法を聞きます。介護医療院の候補には、本人に必要とされる医療と生活支援を受けられるか、家族との情報共有をどう行うかを聞きます。
見学全体の確認項目は介護施設の見学で確認したい5つのことに整理しました。生活の場を中心に特養と老健を比べる場合は、特養と老健の違いへ。サ高住と特養の費用の見方は、サ高住と特養の費用比較で確認できます。
今日できる確認は、病院の退院支援担当者へ「在宅復帰を目指す段階ですか。長期療養を考える段階ですか」と聞くことです。どちらかに決められないなら、その理由も候補施設へ渡す材料になります。
よくあるご質問
介護医療院と老健は、どちらも要介護者の施設ですか。
どちらも介護保険施設で、要介護者を対象とします。ただし役割が違います。老健はリハビリなどを提供して在宅復帰・在宅支援を目指す施設です。介護医療院は、長期に療養が必要な要介護者へ、医療と介護、日常生活上の世話を一体で提供する施設です。
老健は何か月で退所しなければなりませんか。
この記事で確認した厚生労働省の公式説明は、老健を在宅復帰・在宅支援を目指す施設としていますが、全員に共通する退所期限は示していません。入所期間の見通しは、本人の状態、施設サービス計画、受入先などで変わります。候補施設へ評価時期と退所後の調整方法を確認してください。
施設数が多い老健のほうが入りやすいですか。
全国施設数だけでは判断できません。2024年10月1日時点の施設数は老健4214、介護医療院917ですが、地域ごとの定員、受入条件、空き、本人の状態は別です。数字は施設種別の広がりを見る資料であり、磐田での入所可否を示しません。候補ごとに相談してください。

この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール
参考にした公式情報
- 厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査」報道発表資料(2025年12月19日公表/2026年9月確認)
- 厚生労働省「介護医療院とは」(2026年9月確認)
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護老人保健施設(老健)」(2026年9月確認)
この記事は2026年9月3日に確認できた全国統計と一般的な役割の整理です。制度、自己負担、利用条件、必要な医療、受入可否は個別の状況と時期で変わります。医療上の判断は主治医へ、介護サービスの利用は担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに確認してください。