「台風のとき、親を福祉避難所へ直接連れて行けますか」
できません。磐田市は「災害発生直後に自宅等から福祉避難所へ直接避難することはできません」と明記しています。まず指定避難所へ避難し、そこでの避難生活が困難になった段階で、市が開設先を判断します。移送は原則として家族が行います。台風シーズンの前に、この順番だけは共有しておいてください。
磐田市は「直接避難することはできません」と2回書いている
磐田市は防災のページで、福祉避難所について「災害発生直後に自宅等から福祉避難所へ直接避難することはできません」と書いています(2025年4月1日更新、担当は健康福祉部高齢者支援課給付グループ、電話0538-37-4869)。同じページの注意事項欄にも「災害発生直後から福祉避難所へ避難することはできません。まずは、指定避難所へ避難することを想定しています」とあります。1ページの中に、同じ趣旨が2回置かれています。
そもそも福祉避難所とは何か。磐田市の定義では「一般の避難所(以下『指定避難所』という。)等での避難生活が困難な方のために開設する避難所」であり、「本市では、市内の社会福祉施設等と協定を結び、福祉避難所として指定しています」。
受け入れの対象は、「特別養護老人ホーム、老人短期入所施設等の福祉施設に入所するに至らない心身等の程度」の方です。高齢者、障がい者、乳幼児のほか、妊産婦、傷病者、難病患者、医療的ケアを必要とする方などが挙げられています。介助する家族も受け入れますが、市は「必要最低限の人数」としています。
開設までは6段階。福祉避難所は「二次的な避難所」
磐田市は、福祉避難所が開くまでの流れを6段階に分けて示しています。順に読むと、福祉避難所が動き出すのが災害当日ではないことがはっきりします。
- 災害発生後、身の安全を最優先とし、近くの避難場所に避難する。
- 自宅等での生活継続が困難になった場合、小中学校等が指定避難所として立ち上がる。市はここに「※この段階では福祉避難所は開設されていません」と注記している。
- 避難生活が長期化し、指定避難所で生活することが困難となった場合、身体の状態や避難所での困りごとを市へ連絡する。
- 市が、受け入れ先となる社会福祉施設等の被災状況や受入可能人数を確認し、受け入れを要請する。
- 避難スペースの確保やスタッフの配置などの受入体制が整った段階で、福祉避難所を開設する。
- 要配慮者の家族などにより、福祉避難所へ移送する。
3番目の起点が「避難生活が長期化し」である点に注目してください。数時間後の話ではありません。行き先も当日まで決まりません。磐田市は「どの施設に福祉避難所を開設するかは、災害の規模、発生場所、要配慮者の避難状況に応じて市が決定します」と書いています。
移送は原則として家族が行う
磐田市の案内でいちばん見落とされやすいのは、移送の担い手です。「福祉避難所への移送は、原則として家族が行いますが、状況に応じて、市職員や施設職員が協力いたします」と書かれています。原則は家族です。
指定避難所から福祉避難所まで、車を出し、車椅子や介助用品を積み、通れる道を選んで運ぶ。これを家族がやる前提です。市外に住むお子さんが避難を担当する想定なら、その日に磐田まで来られるかどうかが計画の前提条件になります。来られない可能性のほうが高いなら、市内で動ける人を先に決めておくしかありません。
良い点を2つ数えたうえで、一事業者として注文を2つ書く
磐田市のこのページには、評価できる点が2つあります。ひとつは「できません」と言い切っていること。曖昧に「状況に応じて」とだけ書かれていたら、家族は当日まで期待を持ち、そこで詰まります。期待させない書き方は、計画を立て直す時間を家族に渡すという意味で誠実です。もうひとつは、流れを6段階に割り、どの段階で誰が動くかを分けたことです。3番目の「市へ連絡します」の主語が要配慮者の側だと読めば分かります。誰かが自動的に見つけに来てくれる制度ではない、という前提が伝わります。
そのうえで、サービスを運営している一事業者として、注文が2つあります。ひとつめは、協定を結んでいる施設の数が公表されていないことです。ページには協定書の様式と、協力してくれる法人・施設への募集の記載はあります。しかし現在何か所と協定済みなのかは、私が探した範囲では見つけられませんでした。施設名を伏せる事情は分かります。当日の直接来訪を招くからです。それでも箇所数と施設種別ごとの内訳だけなら、混乱を招かずに出せるはずだと私は考えています。数が分からないと、家族は自分の親が入れる見込みを見積もれません。
ふたつめは、窓口が分かれていることです。福祉避難所のページの担当は高齢者支援課給付グループ、事前の登録にあたる避難行動要支援者名簿の担当は福祉総務グループ(電話0538-37-4814)です。福祉避難所のページ本文に名簿への言及はなく、関連情報のリンクが置かれているだけでした。事前の備えと当日の受け入れは、家族から見れば1本の話です。福祉避難所のページに「事前にできることはこちら」と一文あるだけで、たどり着ける家族は増えるはずです。
事前にできるのは、避難行動要支援者名簿への登録
磐田市は「避難行動要支援者名簿」を作成し、自治会、自主防災会、民生委員・児童委員に配布しています(「災害時における要配慮者支援」2024年5月28日更新)。避難行動要支援者とは「要配慮者のうち、災害時に自ら(家族の助けがあっても)避難することが困難で、支援を要する在宅の方」。登録は「避難行動要支援者名簿登録兼情報提供同意書」を市へ提出します。
対象は、家族以外の避難支援が必要な在宅の方で、次のいずれかに該当する場合です。
- 要介護3から5の判定を受けている方
- 身体障害者手帳の1、2級に該当する方
- 静岡県療育手帳のA1からA3の判定を受けている方
- 精神障害者保健福祉手帳1級の交付を受けている方
- 特定疾患医療受給者(難病指定患者)
- 75歳以上の高齢者のみ世帯
- 上記に準じる状態にある方(自己申告)
最後の「準じる状態にある方(自己申告)」があるので、要介護2以下でも相談の余地は残ります。逆に、要介護3から5が入口のひとつということは、まだ認定を受けていないご家庭ではそこが出発点です。認定にかかる日数は要介護認定は何日で出る?磐田市は平均30.1日にまとめました。台風シーズンに間に合わせたいなら、逆算する必要があります。
ただし、市は但し書きも置いています。「必ず避難支援を受けられるという制度ではありません」。災害時は避難支援者も被災するためです。登録は保険ではなく、可能性を上げる手段だと受け取ってください。個別避難計画は自治会・自主防災会が作成し、民生委員・児童委員が協力する形です。計画を紙で終わらせず本人参加で確かめる手順は磐田市の個別避難計画|本人参加で確かめるに整理しました。
運営する側から言うと、施設を当てにした計画は計画になっていない
私は磐田市見付で、サービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターの3つを運営しています。利用者が増えれば売上が増える立場です。以下は現場で見た特定の場面ではなく、運営する側としての私の意見です。
福祉避難所を当てにした避難計画は、計画になっていないと私は考えています。開設するかどうか、どこを開けるかを決めるのは市であって、施設が自分の判断で受け入れを決められる仕組みではありません。「いざとなったら施設へ」は、家族が自分で組める段取りではないのです。災害当日に施設へ直接向かうことも避けてください。受入体制が整う前に着いても、そこは避難所として動いていません。
通所や訪問を使っているご家庭でも、災害の日にその事業所が動ける保証はありません。職員も同じ市内で被災します。猛暑日に事業所へ確認しておくことと同じで、平時に「その日どうなるか」を聞いておくかどうかで差が出ます。
正直に書くと、私にも「その日どこが開くか」は分かりません。協定先の一覧が公表されていないので、運営している側から見ても全体像は見えていません。だから私が言えるのは、指定避難所までの経路と、そこで最初に誰に何を伝えるかを決めておいてください、ということだけです。それ以上を約束できる立場ではありません。
台風シーズン前に、今日できる確認は3つ
気象庁の平年値(1991年から2020年の30年平均)では、東海地方への台風の接近数は9月が1.2個で年間最多です。年間3.5個のうち8月が0.8個、9月が1.2個。上陸数の平年値も9月が1.0個で最多です。9月に入る前に、3つだけ手元で終わらせてください。
- 親御さんの家から最も近い指定避難所を1か所決め、経路を昼のうちに車で通ってみる。磐田市は地区ごとに指定避難所の一覧を公開しています。福祉避難所ではなく、まずここが行き先になります。
- 避難行動要支援者名簿に登録済みかどうかを確かめる。担当は福祉総務グループ(0538-37-4814)です。登録していれば、名簿は自治会長・自主防災会長・民生委員児童委員へ渡っています。
- 「高齢者等避難」が出たときに誰が動くかを決めておく。磐田市の案内では、警戒レベル3の高齢者等避難は「災害のおそれあり」の段階で、危険な場所から高齢者等が避難する、市が発令する情報です。この時点で動き出すのが前提になっています。
今日、避難先の施設を決める必要はありません。決められる仕組みでもありません。介護がこれから始まるご家庭は介護を知るから順番を確かめ、相談先が定まっていなければ地区の地域包括支援センターに一本かけてください。防災の相談も、そこが入口になります。すでにデイサービスや訪問介護を使っているご家庭は、台風の前に、磐田の介護施設に確認したい4つのことのほうに、事業所へ聞いておく質問をまとめました。
よくあるご質問
磐田市の福祉避難所には、災害が起きたらすぐ行けますか。
行けません。磐田市は「災害発生直後に自宅等から福祉避難所へ直接避難することはできません」と明記しています。福祉避難所は必要に応じて開設される二次的な避難所です。まず指定避難所へ避難し、そこでの避難生活が長期化して困難になった段階で、市が災害の規模や受入施設の状況をふまえて開設先を決めます。受入体制が整ってから受け入れが始まります。
福祉避難所までは、誰が連れて行くのですか。
磐田市の案内では「福祉避難所への移送は、原則として家族が行いますが、状況に応じて、市職員や施設職員が協力いたします」とされています。家族が動く前提になっているため、車の手配と介助の担当を、遠方に住むご家族も含めて先に決めておいてください。当日になってから割り振ると間に合いません。
避難行動要支援者名簿には、どうすれば登録できますか。
「避難行動要支援者名簿登録兼情報提供同意書」を市へ提出します。対象は家族以外の避難支援が必要な在宅の方で、要介護3から5の判定を受けている方、身体障害者手帳1・2級の方、75歳以上の高齢者のみ世帯などです。これらに準じる状態の方の自己申告もあります。担当は福祉総務グループ(電話0538-37-4814)です。
この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール
参考にした公式情報
- 磐田市「福祉避難所」(2025年4月1日更新/2026年8月確認)
- 磐田市「災害時における要配慮者支援」(2024年5月28日更新/2026年8月確認)
- 磐田市「指定避難所」(2026年8月確認)
- 磐田市「警戒レベルによる避難情報の発信」(2026年8月確認)
- 気象庁「台風の平年値」1991年から2020年の30年平均(2026年8月確認)
制度・運用・担当窓口は個別の状況と時期で変わります。ここに書いたのは2026年8月27日時点の一般的な整理です。福祉避難所の開設判断、受入対象、移送の扱いは災害の規模や当日の状況によって変わります。ご本人にあてはまるかどうか、また事前に何を登録しておくべきかは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市の窓口でご確認ください。