
親の介護に疑問を伝えたら、カスハラになるの?
介護サービスへの正当な苦情や説明の求めは、それだけでカスタマーハラスメントにはなりません。要求の内容と伝え方、経緯を含めて判断します。2026年10月1日の防止措置義務化は、家族の相談を封じるための制度ではありません。起きた事実と希望する対応を分け、事業所外への相談も選べます。
制度の適用・利用可否・自己負担は個別条件で異なります。
運営側の説明責任を先に置く
介護の苦情を受けた事業者は、まず提供したサービスと説明の内容を確かめるべきです。私は大石浩之(磐田市/不動産業)です。富士ヶ丘サービスの代表取締役として介護事業を運営し、相談を受ける側であると同時に、サービスを売る側でもあります。
私は、苦情の入口を狭めるために、カスハラという言葉を使ってはいけないと考えます。職員を守ることと、家族に説明することは両方とも運営者の仕事です。「職員が困っている」だけで、疑問の中身を調べずに終えるのは順番が違います。
厚生労働省の案内では、改正法の公布は2025年6月11日です。防止措置の事業主への義務化は2026年10月1日に施行されました。防止指針の公布は2026年2月26日です。本記事は2026年10月11日に原文を確認しています。
私が良いと感じるのは、現場の職員だけに対応を背負わせない仕組みです。そのうえで、相談を受ける管理者には注文があります。職員の安全確保と並行して、説明不足や対応の誤りがなかったかも確認してほしいのです。
苦情との境界は三つの要素で見る
厚生労働省の防止指針は、カスタマーハラスメントを三つの要素で示しています。顧客等の言動であること、社会通念上許容される範囲を超えること、労働者の就業環境が害されることです。三つすべてを満たすものが対象になります。
施設・サービス利用者の家族も「顧客等」に含まれます。ただし、苦情のすべてが該当するわけではありません。客観的に許容される範囲の正当な申入れは対象外です。家族であるというだけでも、不満を述べたというだけでも決まりません。
意外に見落とされるのが、障害に伴う障壁を取り除く配慮を求める場面です。防止指針は、その意思を表明すること自体はカスハラに当たらないとしています。説明を聞き取りやすくしてほしい、という相談までためらう必要はありません。
なお、勤務先で介護休業を理由に受ける嫌がらせは、今回の家族と事業所の対話とは別の問題です。該当する場合は介護休業のハラスメント相談で整理しています。
要求の内容と伝え方を分ける
苦情の境界を考える際は、要求している内容と、その伝え方を別々に確認します。防止指針も、内容と手段・態様に着目した総合的な判断を示しています。事業者側の不適切な対応が背景にある場合にも留意する扱いです。
例えば、請求の説明を求めることと、職員の人格を傷つける言葉を浴びせることは分けて考えます。望む説明が正当でも、暴力や威嚇まで認められるわけではありません。一方、事業所に不都合な指摘だから不当だ、とすることもできません。
これは個別案件の法的な判定ではありません。声の大きさ、電話の回数だけを切り取って線を引くのではなく、回答があったか、疑問が残った理由は何かも確かめます。病気や障害の事情が関わる場合も、一括りに扱わないことです。
私は、境界を短い一覧だけで示すことに迷いがあります。分かりやすさは必要ですが、一覧から外れた相談を拒む道具にもなるからです。読者には判定表としてではなく、経緯を整理する手がかりとして使ってほしいと思います。
今日の相談メモは事実と希望を別欄に
介護事業所へ相談するときは、事実と希望する対応を別の欄に書くのが私の提案です。日時、どのサービスの話か、誰から聞いたかを先に書きます。本人が話したことと、家族が直接見たことも分けます。
伝え方の例は「説明と違うと感じた点を確認したい。記録を調べて、返答できる日を教えてほしい」です。これは実際の利用者の発言ではなく、相談用の例文です。最初から謝罪の仕方や処分の内容を決めず、まず何が起きたかの説明を求めます。
相談の終わりには、担当者名、確認する事項、次の返答予定をメモします。電話を切ったあとに不明点が残れば、同じ内容を繰り返す前に、まだ答えのない質問を一つに絞って伝える方法もあります。
ケアプランと本人・家族の希望にずれがある場合は、ケアプランへ家族の意向を伝える準備も役立ちます。サービス内容の調整と、職員の対応への苦情を分けると相談先が見えます。
納得できないときは相談先を変えてよい
事業所との対話で疑問が残る場合は、外の相談先を使う選択肢があります。詳しい窓口と扱う範囲は、磐田市の介護サービス苦情相談にまとめています。事業所への相談だけで解決するとは限りません。
私からは、外部へ話す際も、何を確認したくて、どこまで返答を受けたかを持っていくことを勧めます。親のサービスが止まることへの心配があるなら、その心配も最初に伝えます。匿名で扱える範囲や情報の共有先は、窓口に確認してください。
「カスハラだから対応できない」と言われた場合は、どの言動が問題とされたのか、疑問自体への回答はどう受けられるのかを分けて尋ねる方法があります。相手を問い詰め続けるより、管理者や外部の担当者を交えた対話に切り替えます。
運営する側から、継続の判断を急がせない
介護サービスへの苦情相談は、解約を決めるためだけの行動ではありません。説明を聞いて続けるか、調整するか、別の支援を探すか。その材料を得る段階だと私は考えます。
運営する側から言うと、ご家族に黙ってもらうことを解決にしてはいけません。私なら相談メモの最後に「まだ決めていないこと」の欄を残します。続けるかどうかを保留したまま、疑問への返答を求められる形にしたいからです。これは私の判断基準です。
私は、住まいのサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、通所のふじがおか見付デイサービス、訪問のふじがおか訪問介護センターを運営しています。3つは別のサービスです。住まいと介護サービスの契約も別で、相談・説明の対象を分けて確認します。
よくあるご質問
介護のカスハラと苦情の違いについて、個別の判断と相談の準備を分けて確認します。
強い口調になったら直ちにカスハラですか。
強い口調だけで直ちに決まるものではありません。厚生労働省の指針は、要求内容、伝え方、経緯などを総合的に見る考え方です。ただし、暴力や威嚇が許されるわけではありません。疑問が残るときは、事実と求める説明を書き分け、管理者や外部の相談先に整理を手伝ってもらう方法があります。
何度も説明を求めることは問題ですか。
回数だけでは判断できません。返答がないのか、説明のどこが不明なのかを記録してください。回答済みの事項への過度な繰り返しなどは、内容や態様を含めて判断されます。次に確かめたい質問と返答予定を共有すると対話を整理できます。うまく話せない場合は管理者や担当ケアマネジャーに相談してください。
苦情を言ったら利用を断られませんか。
正当な苦情を述べたというだけでカスハラとはなりません。ただし、個別の契約継続や利用可否をこの記事で保証はできません。利用を断る説明があった場合は、理由、対象となる契約、今後の支援を確認し、担当ケアマネジャーや外部窓口へ相談してください。カスハラという呼び名だけで結論を出さないことです。

この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。磐田市で住まい・通所・訪問の3サービスを運営しています。不動産業では実家じまい・空き家・相続の相談も受けています。プロフィール
参考にした公式情報
本文の制度と日付は、次の一次情報で確認しました(2026年10月確認)。
- 厚生労働省:職場におけるハラスメントの防止(2026年10月11日確認)
- 厚生労働省:カスタマーハラスメント防止指針(2026年10月11日確認)
当社への相談は、見学や契約を決める前でも受け付けています。介護相談フォーム 電話で相談(0538-33-7070/9:00~17:30)
本記事は2026年10月11日確認の一般的な整理です。制度・数値は変わり得ます。制度の適用、利用可否、自己負担は個別条件で異なります。医療・法律などの個別判断は該当する専門家へ相談してください。介護の支援については、担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに確認を。