
親の介護に払ったお金は、全部まとめて医療費控除に入れていいの?
介護費用が医療費控除の対象になるかは、サービスの種類や組合せなどで異なります。まず領収証の医療費控除対象額を確認し、住まいの費用とは分けて整理します。対象額が不明なら発行事業者へ、申告する人や控除の可否は税務署などへ確認してください。
大石浩之(磐田市/不動産業)です。富士ヶ丘サービスの代表取締役として、住まい・通所・訪問のサービスを運営しています。サービスを提供する側の利害がある立場から、ご家族が判断するための確認事項を整理します。
介護の支払いは、全部が医療費になるわけではない
介護費用の医療費控除は、介護という名前の請求を全部足して計算する制度ではありません。国税庁「No.1127」は、居宅サービス等を、対象になるもの、一定の組合せで対象になるもの、対象外となるものに分けています。同じ親の生活を支える支出でも、扱いは同じではありません。
国税庁は、居宅サービス事業者等の領収証には、基本的に医療費控除の対象額が記載されると説明しています。まず見るのは請求総額より、その対象額です。欄が見つからないときは、家族が名前から推定せず、発行事業者へ聞いてください。
本稿で参照する国税庁の案内は、2026年4月1日現在の法令等を示しています。本文確認日は2026年10月17日です。10月からの新制度を紹介するのではなく、年末前に書類をそろえるための整理です。申告する人や控除の可否を、この文章だけで確定することはできません。
通所と訪問は、サービスの組合せを確認する
通所介護と訪問介護は、同じ条件で無条件に医療費控除の対象になるわけではありません。国税庁の表では、訪問看護、訪問リハビリテーションなどが対象となるサービス群に挙げられています。通所介護は、表の医療系サービス等と併せて利用する場合の対象群にあります。
訪問介護も組合せで対象となる群にありますが、生活援助中心型は除かれています。調理、洗濯、掃除などの生活援助中心型は、別の対象外の群に記載されています。単に「ヘルパーに来てもらった」という説明では、領収証の扱いを決められません。
ここで意外なのは、介護保険で利用した支出であっても、それだけでは医療費控除の対象と決まらないことです。国税庁は、介護福祉士等による喀痰吸引等の対価について別の注記も設けています。対象外の群にあるから何も確認しなくてよい、という読み方にも注意が要ります。
私なら、家族のメモにはサービス名を領収証どおりに書きます。「デイ」だけに省略せず、通所介護なのか通所リハビリテーションなのかを確認する。そのうえで、発行事業者に対象額と、その額になった理由を聞きます。医療のサービスを追加すれば得になるという勧めではありません。
住まいの請求と介護の領収証を分ける
サービス付き高齢者向け住宅の住まいの費用と、個別に利用する介護サービスの支払いは分けて確認します。自社でも「ふじがおか見付連理枝」は住まいです。「ふじがおか見付デイサービス」は通所介護、「ふじがおか訪問介護センター」は訪問介護で、それぞれ別サービスです。
住まいと介護サービスは別契約です。家賃等を含む請求を、通所や訪問の領収証と一緒にして、総額を対象額とすることはできません。「同じ運営会社へ払った」という理由では、税の扱いは決まりません。住宅の名称だけで施設サービスの税務上の扱いを当てはめることも避けてください。
私は、封筒をまず「住まい」「通所」「訪問」に分ける方法を提案します。これは申告上の正式な分類ではなく、質問先を見失わないための家族の整理です。封筒を分けても、原本の金額を書き換えたり、対象額を勝手に補ったりはしません。
おむつ代の確認には別の書類が関わります。おむつ代の医療費控除と初年度の準備を参照し、介護サービスの領収証の話と混ぜないようにしてください。
年末前は、支払日と戻ったお金をそろえる
医療費控除の対象となる支払いの期間は、その年の1月1日から12月31日までです。国税庁「No.1120」は、未払い分について、実際に支払った年の対象となると説明しています。利用した月だけでなく、支払日を確認する必要があります。
私は、月ごとの表に「サービス名」「支払日」「領収証の対象額」「払い戻しの有無」を残す方法が分かりやすいと考えます。請求書は支払いの予定、領収証は支払いを確認する資料として分けて置く。書類が欠けた月は空欄のままにし、通帳の数字だけで対象額を埋めないようにします。
国税庁「No.1127」の注4は、高額介護サービス費の払い戻しがある場合、その額を医療費から差し引いて計算するとしています。払い戻しがあるのに支払額だけを足すと、整理が合いません。通知と入金記録も領収証と同じ場所で保管すると、質問しやすくなります。
医療と介護を合わせた負担軽減については、高額医療・高額介護合算制度の確認先を別記事にしています。給付を受ける手続きと税の控除は別です。どの給付をどの支出から引くか迷ったら、通知を持って税務署等へ確認してください。
運営者として、対象額を説明する責任がある
領収証に対象額が示される仕組みは、家族が請求項目のすべてを一から判定せずに済む点で助けになります。私は、原本をもとに事業者へ質問できることを評価しています。書類がそろえば、介護を利用する本人と、支払いを手伝う家族も同じ情報を見られます。
その上で、運営する側には、対象額の記載場所を説明する責任があります。「申告はご家族で」とだけ言っても、請求したサービスの内容は家族には分かりません。事業者が説明できるサービス内容と、税務署等が判断する申告の条件を分ける。この線引きが必要だと私は考えます。
私はこう考えます。領収証を前にした家族に、最初から細かな税の区分を覚えてもらう必要はありません。まず「分からない一枚」を選べるようにしたい。ただ、どこまで説明すれば負担を減らせて、どこから専門判断への踏み込みになるのか、私も迷います。だから、対象額の根拠は発行側が説明し、申告者の条件は専門窓口へつなぐ。答えられないことを曖昧にせず、次に聞く相手まで示すのが私の役割だと思います。
要介護認定と税の別の控除との関係は、障害者控除対象者認定書の申請準備で扱っています。医療費控除の領収証を集める作業とは分け、必要な確認を一つずつ進めます。
今日、金額の分からない一枚を選ぶ
今日の準備は、手元の領収証から、医療費控除対象額が分からない一枚を選ぶことです。発行元とサービス名、利用月、支払日を控えれば、問い合わせの入口になります。全月を一日で完成させなくても構いません。
支払った家族が複数いる場合は、誰がどの支払いをしたかも整理します。誰の申告に入れるかを、都合のよい方へ自由に振り分ける前提で話を進めないでください。書類の重複と不足を見つけてから、税務署や税理士へ確認する順番です。
よくあるご質問
介護費用の医療費控除は、支払額を足す前にサービスの内容と支払った人を確認します。
デイサービスの支払いは全額対象ですか。
デイサービスの支払額が全額対象になるとは限りません。国税庁の表では通所介護は、表に示された医療系の居宅サービス等と併せて利用する場合の対象群です。まず領収証の医療費控除対象額を見て、不明なら発行事業者へ確認します。利用の組合せや個別の申告条件を、サービス名だけで判断しないでください。
子どもが親の費用を払った場合はどうなりますか。
国税庁は、本人または生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費を対象要件としています。子どもであることだけで、親の費用を必ず申告できるとは決まりません。実際に誰が支払ったか、生計の関係はどうかを整理し、税務署や税理士へ確認してください。同じ支払いを家族で重ねて計上しないようにします。
領収証に対象額が見当たらないときはどうしますか。
国税庁は、居宅サービス事業者等の領収証には基本的に対象額が記載されると案内しています。見当たらない場合は、発行事業者へ記載場所と対象額を問い合わせてください。空欄を自己判断でゼロや全額とせず、サービス名と支払日を添えて質問します。申告上の判断が必要な点は、回答を持って税務署等に確認します。

この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護事業を運営し、不動産業では実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール
参考にした公式情報
本文の事実は次の一次情報で2026年10月17日に確認しました。
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本稿は書類整理の一般的な案内です。税務上の個別判断は税務署や税理士へ確認してください。制度・数値・手続きは変わる場合があります。介護サービスの利用可否や自己負担は個別条件で変わります。介護の組合せや利用に関しては、担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに確認を。