特養の入所要件は、原則として要介護3以上

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、公的な介護保険施設の中で最も費用負担が抑えられやすく、終身にわたって生活できる施設として多くのご家族が検討されます。しかし、入所を希望して相談窓口を訪れた際に、「親御さんは要介護1なので原則として申し込みの対象になりません」と説明を受け、驚かれる方が少なくありません。

この原則要介護3以上という基準は、2015年(平成27年)4月の介護保険制度改正によって定められました。制度改正前は要介護1や2の方も広く入所対象とされていましたが、全国的な待機者の増加と、在宅での生活が極めて困難な中重度者への重点的な支援を行うため、法律上の入所要件が見直されたという経緯があります。

磐田市内にある特別養護老人ホームでも、この国が定めた基準に沿って入所受付が行われています。そのため、親御さんの要介護認定の結果が「要支援1・2」または「要介護1・2」である場合、まずは在宅介護サービスや他の居住系施設(サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなど)を主たる選択肢として考えるのが基本的な流れとなります。

要介護1・2でも申し込める「特例入所」の4つの条件

ただし、制度には明確な例外が設けられています。要介護1または要介護2であっても、やむを得ない事由によって在宅での生活を継続することが著しく困難であると認められる場合には、「特例入所」として特養への申し込みや入所が認められています。

厚生労働省が定める指針および磐田市の運用基準において、特例入所の対象となり得る要件は以下の4点に整理されています。

  1. 認知症に伴い、日常生活に支障を来すような症状や行動(徘徊、昼夜逆転、暴言・暴力など)が頻繁に見られること。
  2. 知的障害や精神障害等を伴い、日常生活に著しい支障を来すような行動が頻繁に見られること。
  3. 家族等による深刻な虐待やネグレクト(介護放棄)が疑われ、本人の心身の安全・安心の確保が著しく困難であること。
  4. 単身世帯である、または同居家族が高齢や病弱である等の事情により、家族等による支援が期待できず、地域での介護サービスや見守り支援を利用しても在宅生活の維持が困難であること。

ここで大切なのは、「家族が大変だから」という主観的な理由だけでなく、主治医の意見書や日頃のケアプラン、担当ケアマネジャーからの客観的な記録によって、上記のいずれかに該当する具体的な生活実態を証明できるかどうかという点です。

特養の入所は先着順ではなく「必要性の点数化」で決まる

特例入所の要件を満たして申し込みを受理された場合でも、すぐに居室へ案内されるわけではありません。特養の入所決定は、申し込み順(先着順)ではなく、入所の緊急性や必要性を点数化して比較する「入所検討委員会」の判定によって行われます。

磐田市内の各特養でも、定期的に施設長や生活相談員、看護師、外部有識者らで構成される入所検討委員会が開かれています。そこでは、本人の要介護度、認知症の自立度、在宅サービスの利用状況、主介護者の年齢や健康状態、住宅環境などを統一的な評価基準に基づいて数値化し、待機者名簿の中で入所順位が決定されます。

したがって、仮に数年前から申し込んで順番を待っている要介護1の特例入所待機者がいたとしても、後から申し込んだ独居で重度の要介護5の方が優先されるのが特養の仕組みです。「いつ順番が回ってくるか分からない」と言われる最大の理由は、この入所判定の仕組みにあります。

良い点は負担の軽さ、注文したい点は待機期間の長さ

特別養護老人ホームという選択肢について、客観的な利点と注意点を整理してみましょう。

良い点は、社会福祉法人などが運営する公的な施設であるため、月額の利用費用が民間の介護施設に比べて抑えやすい点です。さらに所得に応じた負担限度額認定(食費・居住費の減額制度)の対象となるため、年金収入が少ない方でも無理なく長期的な生活を維持できる安心感があります。

一方で、家族の立場から注文したい点は、入所までの待機期間が長期化しやすく、親御さんの状態悪化に即応できないケースが多い点です。要介護1や2の特例入所の場合、待機順位の上位に食い込むことは容易ではなく、申し込みを出したまま在宅介護で家族が限界を迎えてしまう「介護倒れ」のリスクが常に隣り合わせにあります。

運営する側から言うと、特養待ちの間の安全な居場所を確保する

私は大石浩之(磐田市/不動産業)です。富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役として、住まいの「ふじがおか見付連理枝」、通所介護のふじがおか見付デイサービス、訪問介護のふじがおか訪問介護センターを運営しています。住まいはサービス付き高齢者向け住宅で、通所・訪問とは別のサービス、別の契約です。

私はこう考えます。特養の特例入所を申し込むことは家族の権利であり、必要であれば躊躇なく手続きを進めるべきです。しかし、「特養の空きを待つ間、今日の夜と明日の暮らしを誰がどう守るのか」という足元の安全対策を置き去りにしてはいけません。これは特定の相談事例ではなく、介護の現場と住まいを提供する側としての私の意見です。

実際、特養への入所申請を行いながら、順番が回ってくるまでの数か月から1〜2年の間、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームを一時的な住まいとして利用されるご家庭は少なくありません。民間施設であれば、要介護1や2であっても入居時の敷居が低く、即座に24時間の見守りと生活支援を受けられます。特養の順番が巡ってきた段階で退去し、特養へ住み替えるという計画的な二段階の選択肢も、家族の心身を守る有効な知恵となります。

入所施設の見学や比較を検討される方は、介護施設の見学で家族が確認する項目も合わせて参照してください。

なお、退院直後のリハビリ施設については老健の入所期間と在宅復帰の住まい選び、月々の自己負担の基準については介護保険の自己負担割合の判定基準も合わせてご覧ください。

今日できる確認は、親の認定調査票とケアマネへの事前相談

親御さんの特養入所や特例入所を考え始めたご家族が、今日すぐにできる確認手順は以下の通りです。

  1. 親御さんの介護保険被保険者証を確認し、現在の要介護度と認定の有効期間をメモする。
  2. 要介護1または要介護2の場合、4つの特例入所事由(認知症行動、障害、虐待、単身支援困難)に当てはまる具体的な場面を箇条書きにする。
  3. 担当のケアマネジャーに電話を入れ、「特養への申し込みや特例入所の該当性について相談したい」と意向を伝える。

申し込みに必要な書類には、ケアマネジャーが作成する意見書やアセスメントシートが必須となる場合がほとんどです。家族だけで抱え込まず、日頃の生活実態を最もよく知る専門職と連携することが、手戻りのない申請への第一歩です。

よくあるご質問

ご家族から寄せられることの多い疑問について、実務の観点から回答します。

要介護1や2でも特養に申し込むことはできますか。

申し込むことは可能です。ただし特例入所の要件(認知症による著しい行動、知的・精神障害、深刻な虐待、単身等で家族の支援が困難)のいずれかに該当し、在宅生活の継続が困難であると施設側の入所判定委員会で認められる必要があります。

特養の申し込みは先着順で順番が決まるのですか。

先着順ではありません。入所申込書や介護度、介護者の状況などを点数化し、入所の必要性が高い方から順に案内されます。申し込み後も本人の身体状況や家庭環境が変わった際は、内容の更新届を提出します。

特養の順番待ちをしている間、親の住まいはどうすればよいですか。

在宅でデイサービスやショートステイを組み合わせる方法のほか、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホームへ一時的に入居して待機する選択肢もあります。介護保険自己負担や住居費の予算に合わせて担当ケアマネジャーに相談してください。

著者・大石浩之(富士ヶ丘サービス代表取締役・宅地建物取引士)の顔写真

この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール

参考にした公式情報

以下の一次情報を2026年9月11日に確認しました。

本記事は2026年9月11日に確認した公表情報をもとにした一般的な整理です。特例入所の該当性や入所順位の判定は各施設および市町村の指針に基づき個別に審査されます。入居や契約を急ぐ必要はありません。

介護相談フォームはこちら 電話でも相談できます(0538-33-7070/9:00〜17:30)

介護の制度・利用可否・自己負担は個別条件で変わります。担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに確認してください。