介護保険の自己負担割合とは|全員一律1割ではない
親御さんが要介護認定を受け、デイサービスや訪問介護の利用を始めようとするとき、「介護保険を使えば1割負担で済む」と思い込んでいる方が多くいらっしゃいます。実際、要介護認定者の約8割以上の方は1割負担ですが、現役並みの所得や年金収入がある高齢者については、2割または3割の負担が義務づけられています。
この負担割合の差は、介護保険法に基づく「応能負担(負担能力に応じた負担)」の考え方によるものです。健康保険証とは別に、磐田市から毎年交付される「介護保険負担割合証」という薄いピンクや緑色のハガキ大の証書によって、利用者本人の負担割合が個別に指定されます。
ケアプランを組む際、負担割合が1割か2割かで、同じサービス量を利用した場合の自己負担額が月数万円単位で変わってくるため、事前の正確な把握が欠かせません。
判定の仕組み|合計所得金額と年金収入の「2段階判定」
負担割合がどのように決まるのか、厚生労働省の基準および磐田市の判定ルールに基づいて整理します。判定は「第1号被保険者(65歳以上)」を対象に、毎年以下の2段階で行われます。
第1段階:本人の前年の「合計所得金額」
まず、介護サービスを利用する本人自身の合計所得金額(公的年金等控除などを引いた後の所得)をチェックします。
- 合計所得金額が160万円未満:無条件で「1割負担」となります。
- 合計所得金額が160万円以上220万円未満:第2段階の世帯判定へ進みます。
- 合計所得金額が220万円以上:第2段階の判定次第で「3割負担」の可能性があります。
第2段階:世帯内の65歳以上の「年金収入+その他の合計所得金額」
第1段階で160万円以上となった場合でも、世帯全体の年金収入などの合計額に応じて、負担割合が抑えられる救済判定が入ります。
- 本人の合計所得金額が220万円以上の場合:単身世帯で「年金収入+その他所得」が340万円以上(2人以上世帯なら463万円以上)であれば「3割負担」。これ未満なら「2割負担」となります。
- 本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満の場合:単身世帯で「年金収入+その他所得」が280万円以上(2人以上世帯なら346万円以上)であれば「2割負担」。これ未満なら「1割負担」に引き下げられます。
このように、年金受給額や不動産収入、株式譲渡益などの有無によって、毎年きめ細かく判定が更新されています。
負担割合証の有効期間は「8月1日〜翌年7月31日」
負担割合証の有効期間は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。磐田市では、毎年6月に確定する最新の住民税課税データをもとに判定を行い、7月中旬から下旬にかけて対象者へ新しい負担割合証を簡易書留または普通郵便で郵送しています。
注意が必要なのは、介護保険被保険者証(介護度が記載された証書)の有効期限と、負担割合証の有効期限は一致しないという点です。ケアマネジャーやデイサービスの事業所には、毎年8月1日の切り替え時に必ず新しい負担割合証を提示する必要があります。更新された証書をタンスの奥にしまい込んでしまうと、事業所側で請求処理ができなくなるため注意が必要です。
良い点は公平な仕組み、注文したい点は不動産売却等の一時的影響
負担割合制度についての客観的な利点と注文したい点を挙げます。
良い点は、現役世代の保険料負担を抑えつつ、経済力のある高齢者に相応の負担を求めることで、持続可能な介護保険制度を維持できる公平性です。
一方で、注文したい点・注意すべき点は、「実家の土地建物を売却して一時的な譲渡所得が出た年」に、翌年度の合計所得金額が跳ね上がり、負担割合が1割から一気に3割へと跳ね上がってしまうケースがあることです。年金収入自体は変わっていなくても、一時的な不動産売却益によって介護費用が跳ね上がるリスクがあるため、売却のタイミングや税金の特例控除の適用については税理士や専門窓口での事前確認が欠かせません。
運営する側から言うと、負担が増えてもサービスを削りすぎない
私は大石浩之(磐田市/不動産業)です。富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役として、住まいの「ふじがおか見付連理枝」、通所介護のふじがおか見付デイサービス、訪問介護のふじがおか訪問介護センターを運営しています。住まいはサービス付き高齢者向け住宅で、通所・訪問とは別のサービス、別の契約です。
私はこう考えます。通知が届いて「2割負担になってしまった」と知ったご家族が、費用の支払いを心配してデイサービスの回数を半分に減らしてしまったり、訪問介護の利用をやめてしまったりする場面を時折見かけます。しかし、サービスを急に削ることは、親御さんの孤立や運動機能の低下、同居家族の介護疲れにつながり、結果的により重篤な状況を招いてしまいます。
介護保険には、1か月の自己負担合計額が一定の上限を超えた場合に払い戻される「高額介護サービス費」というセーフティネットがあります。一般世帯であれば月額44,400円が上限となっており、2割や3割負担の方でも上限を超えた金額は市から戻ってきます。慌てて必要な介護を削るのではなく、上限額を踏まえた無理のないケアプランを担当ケアマネジャーと再設計することが賢明です。
施設入所時の費用や生活支援の全体像については、老健の入所期間と在宅復帰の住まい選びや特養の入所基準も参考にしてください。また、見学時の確認事項は親のデイサービス見学|家族で確かめる3つの確認と磐田での手順で整理しています。
今日できる確認は、手元の証書の割合と有効期限のチェック
親御さんの介護費用を把握するために、今日ご家族ができる具体的な手順は以下の通りです。
- 親御さんの保険証入れを確認し、「介護保険負担割合証」を取り出す。
- 表面の「利用者負担の割合」が「1割」「2割」「3割」のどれになっているか確認する。
- 右上の「有効期限」が現在の日付をカバーしているか確かめる。
- もし紛失している場合や割合の判定理由に疑問がある場合は、磐田市役所高齢者支援課(介護保険グループ:0538-37-4769)へ問い合わせる。
負担割合証は再交付の申請も可能です。ケアマネジャーとの月次面談の際にコピーを渡しておくことで、利用限度額と自己負担のバランスを正しく管理してもらえます。
よくあるご質問
負担割合証について、読者から寄せられる質問をまとめました。
介護保険の負担割合証はどこを見れば割合が分かりますか。
毎年7月に磐田市から郵送される『介護保険負担割合証』の表面中央に、『利用者負担の割合 1割(または2割・3割)』と大きく明記されています。有効期間は8月1日から翌年7月31日までです。
年度の途中で収入が変わった場合、負担割合もすぐに変わりますか。
原則として前年の確定申告や住民税の課税台帳をもとに年1回判定されます。ただし世帯構成の変更(同居家族の転出や死亡など)や税の修正申告があった場合は、年度途中でも再計算されて割合が変更されることがあります。
2割や3割になると毎月の介護費用は単純に2倍・3倍になりますか。
1回の利用ごとの自己負担は増えますが、月ごとの上限額を定めた『高額介護サービス費』があるため、上限額を超えた分は申請により後から払い戻されます。上限額も所得区分に応じて定められています。

この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール
参考にした公式情報
以下の一次情報を2026年9月11日に確認しました。
本記事は2026年9月11日に確認した公表情報をもとにした一般的な整理です。個別の合計所得金額や負担割合の判定結果は磐田市が発行する負担割合証に基づきます。入居や契約を急ぐ必要はありません。
介護相談フォームはこちら 電話でも相談できます(0538-33-7070/9:00〜17:30)
介護の制度・利用可否・自己負担は個別条件で変わります。担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに確認してください。
