「親の介護、自己負担が2割になる人が増えるって聞いたけど、うちは対象ですか」
2026年8月26日時点で、対象の拡大は決まっていません。2025年12月25日の社会保障審議会介護保険部会は、2割負担の範囲の見直しについて「第10期介護保険事業計画期間の開始(2027年度)の前までに結論を得る」と整理しました。今できるのは、毎年8月1日に切り替わる介護保険負担割合証で、親御さんの現在の割合を確かめておくことです。
2割負担の対象拡大は、2027年度の前までに結論を出すと整理された
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会は、2025年12月25日の第133回会合で「介護保険制度の見直しに関する意見」をとりまとめました。介護保険の利用者負担2割の対象範囲をどこまで広げるかは、この意見でも結論に至っていません。第10期介護保険事業計画期間が始まる2027年度(令和9年度)の前までに結論を得る、という形で持ち越されています。
言い換えると、2026年8月26日の時点では、誰が2割になるのかは決まっていません。「2割負担拡大」という見出しだけを見て、もう決まったと受け取っている方がいます。決まったのは「いつまでに結論を出すか」であって、対象範囲そのものではありません。
運営する側から見ると、この議論はここ数年、同じ場所で止まっている印象があります。これは部会の資料にそう書いてあるわけではなく、私の受け止めです。
今の自己負担割合は、本人の所得と世帯の65歳以上の収入で決まる
65歳以上の方(第1号被保険者)が介護保険サービスを使うときの自己負担は、1割が原則です。厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」(2025年7月)によると、2割・3割の判定基準は次のとおりです。
| 負担割合 | 本人の合計所得金額 | 同一世帯の65歳以上の「年金収入+その他の合計所得金額」 |
|---|---|---|
| 3割 | 220万円以上 | 単身世帯340万円以上/2人以上の世帯463万円以上 |
| 2割 | 160万円以上 | 単身世帯280万円以上/2人以上の世帯346万円以上 |
| 1割 | 上の2つのどちらにも当たらない場合 | |
見落とされやすいのは右の列です。判定は本人の所得だけでは決まりません。同じ世帯にいる65歳以上の方全員の年金収入とその他の合計所得を足して見ます。夫婦二人暮らしで片方の年金が多い場合、もう片方の負担割合もそちらに引っ張られる形になります。世帯分離という言葉を耳にした方がいるのは、この仕組みがあるためです。ただし世帯分離は住民票の扱いそのものを変える手続きで、介護費用だけを理由に動かすものではありません。
割合が書かれているのが「介護保険負担割合証」です。有効期間は8月1日から翌年7月31日までの1年間で、前年の所得をもとに毎年判定し直します。2025年8月から1割だった方が、2026年8月から2割になることもあります。磐田市では健康福祉部高齢者支援課給付グループ(磐田市国府台57-7 iプラザ3階、電話0538-37-4869)が窓口です。介護を知るのページでは、認定申請から利用開始までの順番を整理しています。
1割が2割になると、月の支払いはどこまで増えるのか
自己負担が1割から2割になっても、月の支払いがそのまま2倍になるとは限りません。介護保険には「高額介護サービス費」があり、1か月の自己負担が世帯の上限額を超えた分は、申請すればあとから戻ります。磐田市公式ウェブサイト「高額介護サービス費」(2026年3月3日更新時点)によると、上限額は所得区分ごとに次のように決まっています。
| 区分 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 課税所得380万円未満の課税世帯 | 44,400円(世帯) |
| 市民税非課税世帯(下記以外) | 24,600円(世帯) |
| 課税年金収入額等の合計80.9万円以下・老齢福祉年金受給者 | 24,600円(世帯)または15,000円(個人) |
| 生活保護受給者 | 15,000円(個人) |
この数字を自分の商売の感覚に置き換えてみます。課税所得380万円未満の課税世帯なら、上限は1か月44,400円です。1割のうちは、在宅で週に何度かデイサービスと訪問介護を使う程度では、この上限に届きにくくなります。2割になると同じ利用量で自己負担が倍になるので、上限に当たる家庭が出てきます。上限に当たれば、そこから先は使っても増えません。負担割合の変更が一番効くのは、上限の手前で使っている家庭です。
ここで先に不利なことを書いておきます。高額介護サービス費で戻るのは介護保険サービスの自己負担分だけです。区分支給限度額を超えて使った分、食費、居住費、日常生活費は対象外で、戻りません。実際にいくら戻るのか、自分の家がどの区分なのかは、担当のケアマネジャーに試算してもらうのが確実です。私はケアプランの中身を見ずに月額を言い当てられません。
運営する側から言うと、負担割合の話は「使う量」の話になる
私は磐田市見付で、サービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターの3つを運営しています。負担割合が上がれば、利用回数を減らしたいという相談が出ます。それはうちの売上に直結する話なので、先に書いておきます。利害のある側が書いていると分かったうえで読んでください。
そのうえで私が考えているのは、費用が心配になったとき最初に削られやすいのが、訪問介護の回数とデイサービスの週あたりの日数だ、ということです。ここを削れば介護保険の自己負担は減りますが、家族の手が空く時間も減ります。支出が減った分、家族の時間という別の負担が増える形です。どちらが重いかは家ごとに違います。
制度としては、負担能力に応じて割合を分ける考え方に筋は通っていると思います。ただ、実際に相談に来られるご家族が最初に口にするのは「それで来月いくら払うのか」「誰がいつ役所へ行くのか」です。制度の議論と、この2つの質問の距離が遠い。正直に言えば、私は対象拡大に賛成とも反対とも言い切れません。事業者としては利用控えが怖い一方で、保険財源の話も無視できないからです。
それでも一つ言い切れることがあります。これは私の見立てですが、拡大が決まるかどうかより、負担割合証を一度も開いていないご家庭のほうが、今は気にかかります。割合が変わったことに数か月気づかないまま、明細書の金額だけを見て不安になる。そういう順番になりがちです。
もう一つ、混同されやすいので分けて書きます。サービス付き高齢者向け住宅は住まいの契約で、家賃・共益費・食費は介護保険の給付ではありません。負担割合が1割から2割に変わっても、家賃や食費は変わりません。変わるのは、そこで別に契約して使う訪問介護やデイサービスなど、介護保険サービスの自己負担のほうです。住まいの契約と介護サービスの契約は別物だと押さえておくと、見通しが立てやすくなります。
磐田のご家族が、今日できる確認は3つ
2割負担の対象拡大の結論を待つあいだにも、手元で確かめられることがあります。次の3つは、電話1本か引き出し1つで済みます。
- 介護保険負担割合証を探す。2026年8月1日から新しいものに切り替わっています。書いてある数字が1なのか2なのかを見ます。
- 世帯に65歳以上が何人いるかを確認する。判定は同一世帯の65歳以上全員の収入で行うので、人数と住民票上の世帯を把握しておきます。
- 高額介護サービス費の区分を、担当のケアマネジャーに聞く。上限額がどこにあるかが分かると、負担割合が変わったときの影響の大きさが見当を付けられます。
今日、施設を決める必要はありません。見学の予約を入れる必要もありません。負担割合証の数字を1つ確かめるだけで、来年の見通しは今日より確かになります。まだ介護保険の申請をしていない段階なら、先に地域包括支援センターへ相談してください。夏場に通所や訪問を使っているご家庭は、磐田の猛暑日、デイサービスと訪問介護の熱中症対策もあわせてお読みください。
よくあるご質問
2割負担の対象拡大は、いつ決まりますか。
2026年8月26日時点では決まっていません。2025年12月25日の社会保障審議会介護保険部会がまとめた意見では、第10期介護保険事業計画期間が始まる2027年度の前までに結論を得るとされています。対象範囲も実施時期も、その結論を待つことになります。
介護保険負担割合証が見当たりません。どこに聞けばいいですか。
磐田市にお住まいなら、健康福祉部高齢者支援課給付グループ(磐田市国府台57-7 iプラザ3階、電話0538-37-4869)が窓口です。有効期間は8月1日から翌年7月31日までの1年間で、毎年新しいものが交付されます。担当のケアマネジャーが写しを持っていることもあります。
サービス付き高齢者向け住宅の家賃も、負担割合が上がると増えますか。
増えません。サービス付き高齢者向け住宅の家賃・共益費・食費は住まいの契約に基づく費用で、介護保険の給付対象ではないためです。負担割合が影響するのは、そこで別に契約して使う訪問介護やデイサービスなど、介護保険サービスの自己負担分です。
この記事を書いた人:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
磐田市見付でサービス付き高齢者向け住宅「ふじがおか見付連理枝」、ふじがおか見付デイサービス、ふじがおか訪問介護センターを運営する富士ヶ丘サービス株式会社の代表取締役。介護施設の運営から不動産事業を始め、実家じまい・相続の相談も一件ずつ受けています。プロフィール
参考にした公式情報
- 厚生労働省「第133回社会保障審議会介護保険部会の資料について」(2025年12月25日開催/2026年8月確認)
- 厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」(2025年7月/2026年8月確認)
- 磐田市「高額介護サービス費」(2026年3月3日更新/2026年8月確認)
- 磐田市「地域包括支援センター」(2026年6月29日更新/2026年8月確認)
制度・自己負担・利用条件は個別の状況と時期で変わります。ここに書いたのは2026年8月26日時点の一般的な整理です。ご本人の状況にあてはまるかどうかは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、市の窓口でご確認ください。